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人災派遣会社シリーズ   製作者:紫電改


小説 『人災派遣のフレイムアップ』 
第4話 『不実在オークショナー』



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◆◇◆ 11 ◇◆◇

 
 
「貴様は手を出すなよ。せっかく興に乗ってきたところだからな」
  ポケットに両手を突っ込んだままこちらをめつける、そのちろちろと燃える石炭のような眼を見て真凛は直感した。――強い。
「なら、やるまでだよ」
  その事で逆に真凛の腹が据わった。こいつを倒し、あの地雷使いも倒す。その上であの人達を助け出し、偽物のバッグの出所を突きとめる。それで万事がうまく行く。腰抜けのあいつが明日の朝やってきたら、「もう解決したよ」と言ってやるのだ。あいつはきっと驚いて、いかにボクの実力を見誤っていたかを思い知るだろう。呼吸を一つ。姿勢を低くし、一気に突進した。
「ほう……」
  呼応する『毒竜』がポケットから取り出したのは、銃。小型のリボルバーを抜き放ち、凄まじい速度で連射する。だがそれは真凛にとっては脅威ではない。浮かび上がる『線』をかわし、一気に間合いを詰める。と、『毒竜』の左膝が浮いていた。
「くっ!」
  踏みおろされる靴底を、ギリギリで足を捻ってかわす。銃撃は囮。奴の狙いは最初から、負傷した真凛の脚を踏み折る事だった。かわしたものの、無理な挙動は痛んだ右足に過剰な負担をかけた。苦痛が駆け上がってきて脳裏に弾ける。だがそれを確認する余裕も無く、飛んできた左のフックをかわす。開手で大きく振るわれたフック、いや、爪撃は、近くにあった鉄の支柱に被弾し、まるで紙細工のように易々と引き裂いた。甲高い金属音と火花が盛大に撒き散らされる。
「――薬物!?」
  真凛の表情に警戒の色が濃くなる。敵の使うスキルは、典型的な軍隊格闘技だ。熟達の域に達しているが、それだけなら真凛の敵ではない。だが、あの膂力は明らかに常人に出しうるそれではない。二ヶ月前に全身に機械を埋め込んだ男と戦ったが、目の前の男の膂力は、ドーピングでもしているのだろうか、それを凌駕している。加えて、動作の精度という点でも上回っている。真凛のような無手の格闘術を修め、先読みに長けている者にとっては、攻撃が飛んでくる速度よりも、むしろ土壇場で攻撃の軌道を変化しうる精度の方が、脅威になりうるのだ。
「薬物?違うな」
  鉄骨を斬り裂いたはずなのに怪我一つ無い掌を握りなおし、『毒竜』は笑った。
「俺のこれは生まれつきだよ」
  そう言うと、『毒竜』は、百九十センチの長身を沈み込ませ、一気に天を貫くアッパーカットを打ち出した。早く正確だが、動作が大きい。真凛が見切って退く。だが、かわされた事を気にも止めず、そのまま撃ち下ろしへと軌道を変化させる。続けて再び左のフック。怒涛のラッシュが始まった。 
  撃ちだされる猛攻に、真凛は防戦一方になっていた。根本的な膂力が違うため、安易な受け技ではそのまま斬り破られる可能性があった。かと言って、柔法……関節技や投げ、捌き技を仕掛けるには、『毒竜』の技は剣呑過ぎた。溢れるパワーに隠されているが、奴の動きは恐ろしく合理的で、無駄がない。シンプルな軍隊格闘技は、相手を効率的に壊すという一点において恐ろしく有用なのだ。なまじの小技を仕掛ければ、手痛いしっぺ返しが待っている。そう予感させるだけの力量が奴にはあった。真凛が今相対しているのは、言わば、猛獣の膂力を持った達人だった。
  確かにとんでもなく強い。……だけど!
  ラッシュのパターンを脳裏に記憶し、そのリズムを抽出する。フェイントを排除し、その奥に隠れているベーシックのパターンを探り出す。
  居合いのような回し蹴り。そしてそれをフェイントにした後ろ回し蹴り。次に来るのは……裏拳回し撃ち――読めた!
  唸りをあげてすっ飛んでくる裏拳に合わせるように腕をさし伸ばしつつ、勢いよく全身を反転させる。掴んでから投げるのでは間に合わない。伸ばした腕が奴の裏拳の腕を掴むと同時に腰を跳ね上げ、
「っせえええやあああっ!」
  一気に背負って投げた。投げつつ肘の関節を極め、掴んだ手首を握り潰せ……ない!
  ずん、と音を立てて巨体が叩きつけられる。だが、瞬時に足が跳ね上がり、真凛の追撃を阻止する。振り上げた足を振り下ろす反動で、間合いを取りながら一気に立ち上がる『毒竜』。
「ほおう。大した握力だ」
  己の手首を見つめ感嘆の声を上げる。そこには真凛の指の跡がくっきりとついていた。
「だが、俺の筋繊維は人間のそれとそもそもモノが違う。……見誤ったな?」
  事実だ。真凛の握力は、その細い指からは信じられないほど強力だが、七瀬式殺捉術の要諦は本来それではない。触れた相手の箇所の構造を瞬時に把握し、もっとも脆い所を握りつぶすための触覚と、指の動きである。こんなミスをするなんて。
「騒ぎすぎました。いくらここが防音構造でも所詮は旧式。これ以上やると周りが気づきます」
  後ろには、『定点観測者』と、そして集まってきたらしい『狂蛇』の構成員達がいた。
手に手に銃器を構え、狙いを定めはじめている。密入国者達は一連の騒ぎにパニックを起こしていたが、閉鎖されたこの部屋から出る事も出来ない。やがてかけつけた『狂蛇』の構成員達が銃で脅しつけて、一箇所に固められている。刻一刻と、状況は不利になりつつあった。焦るな、焦るな。真凛は自分の中に芽生え始めた感情を必死に否定する。
「俺に命令するな、と言っただろう」
  『毒竜』はそう言ったものの、一理ある事は認めたようだ。真凛の方を見やると、突然、その顎を開いた。途端、真凛の脳裏に、前方の膨大な範囲を囲む『円』が浮かび上がった。反射的に大きくバックステップして間合いをとる。次の瞬間、
「かあああっ!」
  『毒竜』の喉の奥から青黒いガスが吐き出された。
 
 
  『毒竜』モルデカイ・ハイルブロンは、真っ当な両親から生まれた人間のはずだった。
  だがしかし、生命の神秘か、あるいは見えざる誰かの悪意か。彼は純粋な意味での人間ではなかった。突然変異体ミュータント。遺伝子異常で本来人間に必要な器官が欠けていたり、あるいは通常の人間が持ち得ない能力を保有していたりする。
  彼に生まれつき与えられたのは、『暴力』だった。常人を遥かに凌駕する戦闘用の肉体。生まれつきそんなものを与えられて育った子供は、やはり真っ当な人生を歩めなかった。やがて彼は戦いに生き、やがて血の味を覚え。戦場で生業を営む事になる。
  『毒竜』の名のもう一つ『毒』の字の由来は、まさにここにある。突然変異体として誕生した彼の体内には、一部の昆虫や動物が持つような毒腺が備わっているのだ。大量に吸気した空気に、この毒腺から分泌される有機毒物を吹きつけ、混合。そして全身の筋肉で肺腑を締め上げ圧縮し毒ガスとする。戦闘時に喉奥から高圧で吐きかけるこの毒ガスの名こそが『ドラゴンブレス』。戦闘系異能力者の中でももっとも凶暴で、もっとも効率的な戦いをする一人として、『毒竜ファフニール』の名を確たるものとした由来なのだ。
  真凛は濛々と立ち昇る死の煙を回避する。恐ろしい技だがタネは見切った。これならいける!
  そう、思った瞬間、第二波が来た。
  脳裏に描かれる、『円』の範囲。幸い右方向にまだスペースが開いている。そちらに身を逃せば……そう思い、意識をそちらに向けた瞬間凍りついた。円のギリギリ外の範囲に固まっている、密入国者達。自分がそちらに逃げ出せば、それを追い撃つブレスが彼等を捉えるだろう。
 
  このままだと、あの人達を巻き込む。
 
  その躊躇が、一瞬の、だが致命的な隙になった。まともに吹きつけられる毒ガス。咄嗟に呼吸を止めたものの、その程度で無効化出来るほど『毒竜』の切り札は甘くなかった。
「……ぐ……」
  真凛の視界が歪み、頭の中に鈍痛が響く。大気に触れたブレスは数秒程度でその効能を失うが、その数秒の間に例え僅かにでも呼吸器や皮膚から吸い込んでしまえば、容易く致死量に達する。内功を練り上げ、多少は内臓や循環系を制御出来る真凛だからこそこの程度の被害で留められたものの、戦闘力の減殺は目を覆うばかりだ。世界が傾いた、と思ったときには、地面に崩れ落ちていた。
「ひきょう、だぞ……」
  気を抜くと遠くなる意識を必死に引きとめ、声を絞り出す。先ほどの攻撃を、『毒竜』は明らかに狙ってやった。真凛が攻撃範囲を正確に読む事を見抜いた上で、しかも彼等を見捨てられないと判断した上で罠を張ったのだ。
「一般人を、巻き込むのは、仁義に、反するって聞いたぞ……」
  『毒竜』が哄笑する。
「貴様は阿呆か?ここのどこに一般人がいる?」
「何、を……」
「どこをどう見回してもここにあるのは『商品』だけだ。なあ、『定点観測者)』」
  声をかけられた後ろの男の表情は、暗がりに紛れてわからなかった。
「こいつ……っ」
  この倉庫の中にあるのは、袋詰めされたプルトンのバッグと、そして密入国者達。『毒竜』は、それを一まとめにして『商品』と言ってのけたのだ。真凛の黒曜石を思わせる瞳が、滅多にない真の怒りの色に燃え上がる。その腹を『毒竜』は容赦なく蹴上げた。咄嗟に臓腑を引き上げアバラに収め、丹田に気を集める。しかし、人間の規格外の威力で撃ち出された鉄板入りブーツの威力は到底殺しきれるものではない。軽量の真凛はサッカーボールのように吹き飛び、放物線を描いて段ボール箱の山の中へ落下した。
「あぐ……うぅっ!」
「ふふん、『フレイムアップ』のガキどもは揃いも揃ってお目出度いな。一年前、あの忌々しい『西風』につき従っていたアシスタントも、お前とそっくりの行動をしていたぞ」
「……え?」
「あっちは男の方だったか。『因果歪曲』なんぞを使ううっとおしいガキでな。なかなかてこずらせてくれたが、何、今と全く同じ方法で仕留めたわ。お前の同僚だろう?」
  振り上げた腕に大量の血液が送り込まれ、一回り太くなる。広げられた指に異様な圧力がかかり軋みをあげる。異常な膂力を誇る筋肉と、同様に、桁外れの硬度を誇る爪による一撃。『ドラゴンクロウ』と呼ばれる彼のもう一つの得意技である。
「殺すつもりはない。だが、出血死しても恨むなよ」
  詭弁だった。業界の『仁義』では、敵対エージェントの殺害は認められていない。だが、過失による死亡事故はやはり発生する。『毒竜』の言葉は、後で故意ではなく過失だったと弁明するためのものだった。どのみち、現場検証など出来ないし、されないのだ。
  真凛はそれでも目を反らさず、自分に迫る敗北と死を見据える。
  振り下ろされる腕。分厚い石柱すら破断する必殺のカギヅメが、容赦なく叩きつけられた。
 
 
 
「――ぬ!?」
  『毒竜』の表情に異変が生じた。振り下ろされた必殺の一撃は、間違いなく小娘の胴体を爪の数だけ断ち切った。だが。その手ごたえはあまりにも軽すぎた。無残に斬り裂かれた小娘の身体を確かめる。だがそこにあったのは。『へのへのもへじ』と書かれた半紙が一枚貼り付けられた、あまりにも人を小馬鹿にしたつくりの藁人形だった。
「ぐっ」
「がっ」
  同時に、舞い飛ぶ銀光。倉庫の各所に散らばっていた『狂蛇』の構成員達が、次々と飛来したナイフに貫かれて倒れる。
「”ウツセミ”?――まさか!!」
  四方八方を見渡した『毒竜』の視線が、やがて一箇所、偽ブランド品が積み込まれたトラックのコンテナの上に釘付けになる。そこには。
 
「どーもー。忌々しい『西風』です」
「どーもー。『因果歪曲』なんぞをつかううっとおしいガキです」
  真凛を抱えあげた『西風ウェストウィンド』鶫野仁サンと、このおれ、亘理陽司がいた。
 
 
 
 

◆◇◆ 12 ◇◆◇

 
 
「やーれやれ。どうにかギリギリ間に合ったって感じだなあオイ」
  仁サンは野太い笑みを浮かべて、懐から古めかしい巾着袋を取り出した。
「今回は本当に、来音さんには感謝してもしたりないですよ」
  本来であれば明日まで別件にかかりっきりのはずの須江貞さんと仁サンのスケジュールを芸術的な手法でやりくりし、今夜のわずかな時間だけ、仁サンの行動を自由にしてのけたのは来音さんの功績である。巾着袋を放る仁サン。
「陽チン、これ、ウチの秘伝の即効性の毒掃丸。真凛ちゃんに飲ませてやんな」
「材料は何使ってるんですか?」
  仁サンはにやりと笑った。
「水神から授かった秘伝の錬丹だよ。切り傷、打ち身、何でもござれ」
「なんすかソレ。だいたい飲み薬のくせに切り傷に効くんすか?」
  回答は得られなかった。どうやら原料は聞いてもシアワセにはなれないようだ。おれは黙って巾着袋を開くと、鉛色をした丸薬を二粒取り出す。青ざめた顔のまま昏倒している真凛を見て、ようやくおれは自分の采配の間抜けさ加減を実感した。
  ――ごめんな。
「すんません仁サン……いえ、先輩。迷惑をおかけします」
  このわずかな時間だけ復活した、一年前のスタッフとアシスタントのコンビ。おれ達の口調は自然に、かつてのそれに戻っていた。
「亘理」
「ウス」
「五分だけ稼いでやる。尻拭いはここまでだ。それで体勢を立て直せ」
「了解しました、先輩」
「貸しにしておくぞ」
  言うや、鶫野先輩は羽毛の軽さでコンテナから舞い降りた。おれは手早く真凛の口に丸薬を押し込む。ところが苦悶の表情を浮かべて歯を食いしばる真凛の口腔は、丸薬の侵入を頑なに拒んでいる。……おーい、飲めよ真凛。くおら、口を開けこのお子様、ってぎゃあ、指を噛むな!ええい仕方ねえ。
 
 
「あの小僧はともかく。貴様までが出張ってくるとは嬉しい誤算だぞ、『西風』!」
  竜の顎を思わせる口を吊り上げ、『毒竜』は歓喜の声を上げる。かたや鶫野先輩の表情は、困惑に満ちていた。たっぷり二秒、『毒竜』の顔を見つめ出てきた言葉は。
「あーっと。お前、誰だっけ?」
  と、いとも無残なものだった。絶句する、『毒竜』。
「貴様……。俺の顔に泥を塗った一年前の戦い、忘れたとは言わさんぞ!」
「わりー。忘れちまったみたいだわ。プライベートも含めて、俺、忙しいんでさあ」
  『毒竜』の奥歯がぎりぎりと唸りをあげる。挑発だと言う事は理性ではわかりきっている。だが、異常なまでに強固な自尊心にヒビを入れられ、そこを逆撫でされたとあっては、『毒竜』の沽券に関わる。
「『定点観測者』!貴様、こいつらの侵入に気づかなかったとでも言うつもりか!?」
  真凛をトラップで追い込んで以来、後方でずっと待機していた鯨井さんに怒鳴る。声をかけられた方の反応は到って涼しいものだった。
「手を出すな、と言ったのは貴方でしょう。それに私の『受信器』で感知出来るのは、物質情報を除けばあくまで常人レベルの視覚、聴覚、嗅覚の情報です。伝説の『西風』が本気を出したのなら、例えいくつ受信器を展開しても、どれにも捕らえる事など出来はしませんよ」
「貴様、それで気の効いた事を言っているつもりか!?」
「お取り込み中のところ悪いんだけどよお。俺、忙しいんだって。さっさと片付けさせてもらうわ」
  『毒竜』の怒りは頂点に達した。この時点で奴は、鶫野先輩の術中に嵌っている。
「貴様の”ウツセミ”、何度も通用すると思うなよ」
  かああああ、と喉から吐き出される大量の『ドラゴンブレス』。青黒い致死の気体が半径三メートルの空間を埋め尽くし、暗闇の中なお視界が不透明になる。
「……!?」
  異変に気づいたのは『毒竜』本人だった。長くとも数秒で晴れるはずの自分の毒霧。だが、なぜか十秒近く立っても一向に青黒い煙は晴れる気配がない。やがて煙は彼自身をも包みこみ、その視界を閉ざした。
『ギリギリまで俺は手助けを見合わせていたんだがな』
「どこだ!『西風』!?」
  煙の中、どこからともなく響く先輩の声。声のある方向に『毒竜』は腕を振るうが、手応えはない。
『まあ、やるとは思っていたがね。これはお前さんの露骨な仁義違反へのペナルティーってとこだ。しばらく遊んでもらうぞ』
  煙の合間にかすかに浮かび上がる先輩の姿。
「そこか!」
  迷わず振り下ろされる必殺の『ドラゴンクロー』。その爪を、手甲から引き出した短刀のような形の手裏剣、”苦無”で受け止める先輩。先輩も体格が良いとは言え、『毒竜』の膂力を苦無で受け止めるのは尋常の業ではない。と、
『おおい、どこ見てんだよ』
  『毒竜』の背中に、無遠慮とも言えるほどのヤクザ・キックが炸裂した。たたらを踏んで振り返った『毒竜』は有り得ないものを見た。それは、たった今、現在進行形で自分がカギヅメを押し付けているはずの、鶫野先輩だった。
「『西風』が二人……!?」
『いやいや、俺の事も忘れないでくれよ』
  横合いから声をかけてきたのは、やはり『西風』。
『俺の出番も忘れないでくれよお』
  その横にも、やはりもう一人。その横にも。気がつけば、『毒竜』は視界の通らない煙幕の中、無数の『西風』に囲まれていた。
「おのれ、幻術か!?」
  その言葉に、無数の『西風』が一斉に応える。
「「「あーもうこれだから軍人は。そう芸の無い言い方をされっとつまんねえだろ。ここはやっぱり、ジャパニーズ・オヤクソクに従ってこう言って欲しいわけよ」」」
  全員が一斉に直立し、左拳から人差し指だけを立て、それを右拳で握りこみ、やはり人差し指を立てる。声にはならなかったが、「口に巻物を加えていないのは御愛嬌」、と先輩は確かに呟いた。
「「「忍法、影分身!」」」
  四方八方に乱れ飛ぶ、無数の影。
  『西風ウェストウィンド』――体術、常なる忍術のみならず、数々の忍法を体得し、天地生死すら意のままに操ると称された異能のシノビは、その力を解放した。
 
 
「うん……陽、司?」
「よー、起きたか寝坊すけ」
  おれは真凛を起こしてやりながら声をかけた。先輩の薬の効果は覿面だった。真凛自身の鍛錬もあるのだろう。体内の毒素は猛烈な新陳代謝によって、汗として流れ出していたようだ。汗で張り付いたシャツが、貧相な身体を浮き上がらせているのが哀れではある。目を二三度瞬かせて、完全に覚醒した。
「ボクは、あいつと……!?」
「涎たれてんぞ」
  慌てて口元を拭う真凛に、おれは事実を告げた。
「昏倒して1セットロスト。ヘルプが入らなかったら永遠に起きなかった可能性大だ」
  おれの指摘に、真凛はがっくりと肩を落とした。
「負け……ちゃった……」
「そーだな」
「やっぱり……拳だけじゃ何も出来なかった」
「まーな。特にアイツはタチ悪いしなあ」
  おれは淡々と答え、コンテナの下の戦闘を見やる。
「陽司も……アイツと戦ったんだよ、ね?」
「戦ったとも言えねえな。ま、自分ひとりで何とかしようと足掻いたあげくの、無様な敗北だったよ」
「陽司も?」
「そーだな」
  その事実をどう受け止めたのか、黙り込む真凛。
「ねえ」
「なんだよ」
「だから。ボクとアイツを戦わせたくなかった?」
「……そーだな」
  おれは虚勢を張る気になれず、率直に認めた。
「今までも、ボクの知らないところでそういうことしてた?」
「……ああ」
「……ボクは、結局、陽司に守られてただけなのかな」
「なあ真凛」
  おれはこいつに向き直った。
「アイツは……ああいうエージェントや、こんな事件は、極端ではあっても例外じゃない。おれ達の仕事では、結構こんな事にも出くわすんだ。自分ひとりではどうにも出来ないこともある。誇りをかけて戦い、勝っても負けても爽やか恨みっこ無し、なんて仕事はむしろ出会うほうが大変なくらいだ。お前にとっては、楽しくないこともたくさんある」
  その両肩に掌を置いた。
「おれ達と肩を並べて戦うってことは、そういう汚い所に足を突っ込む覚悟を持つってことなんだ。それは別に偉い事でも何でもない。知らなきゃそれで済むってだけのことなんだよ。お前は、おれやおれ達と違って、ここに居なきゃいけないわけじゃない。今なら、まだ、」
  その言葉を遮って、真凛が、おれの右手に自分の両の掌を重ねた。
「道場と裏通りでの試合だけで出来ていたボクの世界が、どれだけ狭いものだったのか。気づかせてくれたのは陽司だよ。人を井戸の底から引っ張り出しておいて、また戻れ、なんてずるいと思うよ」
「しかし、」
「それにね。今はボクが、陽司と一緒に戦いたいんだ」
  おれの目を見て、しっかりと笑った。
「だから、置いてきぼりはもうやだよ」
  いつまでも、子供だと思ってたんだがなあ。
「真凛……」
「陽司……」
「おおい、そろそろ会話に混ざってもいいかあ」
「「ぎゃああああ!」」
  背後からかけられた声に、飛び上がるおれ達。
「なななな、なんで背後にいるんすかアンタ」
「いやまあ。何と言うか流れ的に発言権なさそうだったもんでな。おー真凛ちゃん、復活したようで何より。寝ている間に陽チンに変な事されなかったかあ」
「有難うございました、仁さん」
「するわけないでしょ仁サン。だいたいあいつはどーしたんですか」
「おー。まだ煙幕の中で俺のコピーどもと遊んでるぜー」
「相変わらず、理屈不明の怪しいワザですねえ」
「タネ明かししちまうと、法がただの術になっちまいやがるからな。ここらへんは企業秘密だぜ」
  投げやりに言うと、仁サンはよっこらせ、とオッサン臭い挙動で立ち上がった。
「んじゃ俺は戻るぜ。あんまりサボると須江貞のオヤジがうるせーからな。ほんじゃ真凛、陽チン」
  仁サンはひらひらと手を振った。
「スタッフとアシスタント。力を合わせてがんばれよー?」
「ちぇっ、他人事だと思って」
「他人事さ。お前達の仕事だろ」
  にやりと笑った、次の瞬間には、『西風』はその名のように、姿を忽然と消していた。……ありがとうございました、鶫野先輩。
  さあて。おれはぐるりと肩をまわす。
「行くとすっか」
「うん。さっきは負けちゃったけど、取り返しにいこう」
「負けてねーだろ」
「え?」
おれ達・・・は、負けてない。そうだろ?」
  おれはにやりと笑い、つとめてとぼけた。
「忘れてたけど、お前、おれのアシスタントだったんだよなあ」
  おれの台詞に、真凛も不敵な笑みで応じた。
「そう言えば、ボクはあんたのアシスタントだった」
  おれは真凛の頭に手を置いて、癖の無い黒髪をかき回してやった。
「さあ。勝ちに行くぜ」
 
 
 
 

◆◇◆ 13 ◇◆◇

 
 
「おのれ、どれが本物だ!?」
  霧の中、無数に現れる『西風』の分身を、次々と斬り裂く『毒竜』。彼とて無数の修羅場を潜りぬけ、S級とまで称されたエージェントである。これが幻術だという事は最初から看破している。問題は。
「――くっ!」
  霧の中から、首筋を狙って飛来した苦無を弾き落とす。そう、問題は無数の偽物の中に本物が紛れており、それが攻撃を仕掛けてくるということである。幻術使いや霧使いは業界にも数多いが、熟練のエージェントにとっては、映像の不自然さや気配の有無を見破るのは容易いことだ。だが、この『西風』は、『毒竜』に対してすら完全に殺気を遮断し、攻撃を仕掛けてくる。底無しの技量と言えた。
『そこから右へ三メートル、前へ二メートルの床に攻撃を』
  霧の奥から、『定点観測者』の声が響く。直観的に指示に従った。金属塊を斬り裂く音が響く。すると、たちまち青黒い霧が晴れていった。見れば、彼が今壊したのは、映画で使うようなスモーク発生装置だった。
「……何だこれは」
  見れば、苦無が投擲されてきた方向の柱には、バネで苦無を打ち出す、簡単な仕掛けが取り付けてあった。
「最初に霧の中で分身によりあなたを翻弄し、徐々に幻術と、苦無の自動投擲にすりかわっていったようですね」
「…………ッ」
  自分が子供だましのトリックに引っ掛けられた事を悟り、『毒竜』から一切の表情が消えて失せた。やがて、沈黙の底から、ごりごりと異様な音がする。それは、ごつい顎の奥で、『毒竜』の奥歯と犬歯が擦り合わされる音だった。
「コケにしてくれるな、『西風』よ!」
  視線を向けるトラックのコンテナの上。だがそこには。
「生憎と、『西風』は多忙らしくってな」
  先ほど真凛に向けられた二本のライトを背負って。
「もう一度ボク達がお相手するよ」
  おれ達が居た。
 
 
  仁サンに勝ち逃げされた事が、『毒竜』にして見れば余程プライドに応えたのだろう。マグマのような怒りの前に、既にその理性は、沸騰して気化する寸前だった。
「ガキどもが。いいだろう、毒にのたうちまわらせて悶死したお前達を切り刻み、奴への見せしめとしてやる……!!」
「あーおっかねえ。肉食獣でもカルシウムはきちんと摂ったほうが良いって言うぜ」
  おれはこの一年ですっかり仁サンから受け継いでしまった口調で、野郎を見やる。――大した敵では、ない。おれが昼に奴を見た時に感じた焦燥感は、奴に対しての物ではない。奴に敗れた一年前の自分に対してのものだった。今のおれは、あの時より遥かに冷静で。
「頼りにしているぜ、我がアシスタント」
「りょーかい!!」
  それに、こんな奴もいるわけだし。
  空気が弾けた。コンテナを蹴るかすかな一音。カモシカのように躍動感溢れた跳躍で、真凛がライトの光の中から踊りかかった。毒が抜けたせいか、あるいは他に迷いを吹っ切ったからか。おれが知るどれよりもキレのある動きだった。そのまま、『毒竜』の真上の空間を獲る。空中で背筋と腹筋を爆発させて、縦に二回転。それによって得られた加速と全体重を踵に乗せて、
「っはぁぁぁあああっ!!」
  大木を撃ち割る稲妻を思わせる勢いで叩き下ろした。
「ぬうっ!!」
  たまらず両手を交差させガードする『毒竜』。だが、想像以上の衝撃に膝、腰が沈む。受け止めた両腕の筋肉が、ブチブチと嫌な音を立てるのをはっきりと聞いた。
「かっ!!」
  それでも迷わず反撃を選択出来るところはさすがにS級だった。クロスした両腕の奥から、致死性のブレスが吐き出される。しかしその攻撃は予測の範囲内。真凛はその時点で既に身を翻し、右足を『毒竜』に預けたまま、地面に両手をついていた。そのまま独楽のように身体を回転させ、軽やかに左足で『毒竜』の両足を刈る。完璧なタイミング。柔道教室に初めてやってきた子供のように、一本の棒となって『毒竜』は地面に這いつくばった。
「とどめっ!」
「そうは問屋が卸しません!」
  横合いからかけられた声と、柱に仕掛けられた残りの指向性地雷が真凛に向けて炸裂したのは同時だった。しかし今度は真凛は冷静だった。敵意を感知した瞬間に深追いせずに飛びのき、降り注ぐゴム弾のシャワーをやり過ごす。失敗したと悟って、次のボタンに手をかける『定点観測者』。
  そうは問屋も卸せないってね。
  脳裏の古ぼけた机から『鍵』を引きずり出す。微力ではあるが、この世界に定められたあらゆる法則を根源からクラックする『鍵』を手にし、おれはおれをバックヤードに放り込み、空いた容量を……俺が占有する。
「『この倉庫内で』『七瀬真凛に』『爆発は』『当たらない』」
  事象が捻じ曲げられる。それは、大河の流れを堰きとめ、無理矢理小川に引き込む行為にも似ていた。俺の定義した事象を実現するために、運命と言う名の大河は何とか現実と折り合いをつけようとし――結果、通常では有り得ない確率の『都合のいい幸運』が発生する。
  まさに爆薬が起動するその瞬間。『毒竜』が振るったカギヅメに切り裂かれ、荷重に耐え切れなかった鉄骨が、音を立てて大きくひしゃげた。それに巻き込まれた地雷は、みなあらぬ方向を向いて暴発した。真凛にはカスリ傷もない。
  『定点観測者』鯨井さんが目を細める。
「……亘理君ですか」
  どうもー、と、コンテナから降りたおれは手を挙げて応える。ちなみに真凛や仁サンのようにカッコよく飛び降りられなかったのでこっそり降りて来たのはナイショだ。ここでようやく起き上がった『毒竜』がおれに気づいた。
「ふん。いつぞやの小僧か。確か、因果を操る『ラプラス』とか名乗っているそうだな?」
  何時の間にそんな話が広まってるのやら。おれは無言で親指を突き出すと、下に向けて振りおろす。露骨な安い挑発。だが、かつてない屈辱に理性が煮えたぎっている奴には、火薬庫に花火を投げ込んだようなものだった。奴の顎がますます軋みを上げる。自分の歯を噛み折りそうな勢いだった。
「挑発に乗ってはいけませんよ、『毒竜』。彼の能力は――」
  振り返りもせず返答する。
「何をしに来た、『定点観測者』?」
「敵は二人。しかも先ほどとは明らかに違います。こちらも二人でかからねば危ういですよ」
  相棒に送った忠告は、だが逆効果のようだった。
「俺に命令するな、と言っただろう」
「しかし」
「仁義破りの闇討ちしか出来ぬような腰抜けは、居るだけ足手まといだ」
  鯨井さんの顔色がはっきりと変わった。
「……わかりました。では私は退くとしましょう」
  言うや、踵を返す鯨井さん。本当に手を出すつもりはなさそうだ。
「決着がつくまで、密入国の皆さんの面倒を見ていますよ」
「そうするがよいさ。どの道ここからは」
  頬骨が張り出す。頑丈なはずのフライトジャケットがぶちぶちと音を立てて弾けとび、胸骨がべきべきと音を立てる。首が延び、背中が隆起し、筋肉が膨れ上がる。爪が延び、瞳孔が絞られる。顎が突き出し、ぎらつく牙が剥き出しになる。
「周囲なゾ気にカケテいてはやっテイらレヌからナ!」
  言葉を喋るに適さなくなった口から、おぞましい声を紡ぎだした。これが、『毒竜』の中に宿る真の力か。突然変異の異常な筋力を全開にし、そしてそれに適応すべく骨格が変形した結果、人間とは呼び難い、爬虫類を思わせるフォルムになっている。竜人ドラゴニュート、という言葉がおれの脳裏をよぎった。
「……えーっと、陽司」
「ナンダネ七瀬クン」
「怪物退治も、ボクらの仕事なのかな?」
「ま、比較的オーソドックスな部類に入るかな」
  おれはしれっと嘘八百を述べ、人間辞めました、と全身で主張している『毒竜』をねめつけた。その身長も大きく変化し、恐らく二百三十センチに達していると思われた。翼と尻尾が生えていないのが、最後の良心という所だろうか。
「挽肉ニナルガイイ!!」
  突進。その自重を物ともせず、膨れ上がった筋肉がおれ達に遅いかかる。
「右!」
  真凛の声に従い、おれは右に横っ飛ぶ。当の真凛は、自身に『毒竜』の突進をひきつけつつ、左にかわした。すれ違い様に肋間に貫き手を放つが、装甲じみた筋肉に阻まれる。肉と肉との衝突とは思えぬ、硬質な音が響き渡る。そのまま勢い余った『毒竜』は鉄骨に突っ込み、倉庫がまたも大きく軋んだ。おれは崩れ落ちた残骸の山に突っ込みそうになり、どうにか立ち止まった。
「強そうだなあ、おい」
「そうでもないんじゃない」
  うちのアシスタントの頼もしい返答である。
「そりゃまたどうして」
「だってアイツ、さっきまでのボクとそっくりだ」
  なーるほど、それなら。
「いい手はあるか?」
  おれの声に、真凛が床に落ちてたモノを拾い上げる。
「これならどうだろう」
  いつから目端が効くようになったんでしょ、このお子様。
「ナイスアイディアじゃないの」
  おれ達はにやりと笑った。
「来るよ!」
「おうよ」
  今度はおれに向けて突進してくる『毒竜』に、真凛が割って入る。
「ギジャァァァアアアアッ!!」
  咆哮とともに、今や竜そのものとなった顎から、大量のブレスが一直線に吹き出される。
「さすがにそう何度も見せられると――」
  くるり、とワルツを思わせる軽やかなステップで、毒息を避けつつ斜め右に踏み込み入り身。『毒竜』に一瞬背を向けつつ脇を抜け跳躍。そのまま勢いを殺さず高々と放たれた旋風脚が、スパーン、と擬音を発したくなるくらい綺麗に二メートル三十の位置にある『毒竜』の後頭部に入った。
「小娘ガァッ!!」
  反射的に振るわれたカギヅメが地面に衝突し、敷かれた分厚いコンクリートの床を瞬時にズタズタにする。だが。
「――いい加減、飽きてくるなあ」
  真凛のその声を聞いた『毒竜』は明らかにうろたえた。なぜならその声は、彼の後頭部から聞こえたからだ。回し蹴りに放った足をガイドにし、一瞬で『毒竜』の背を駆け上がり、肩車の姿勢で『毒竜』の首に跨っていたのである。
「アンタは最低のひとだけど。聞こえるうちに一応謝っておくね」
  咄嗟に攻撃方法の選択に戸惑ったその時、『毒竜』は、確かにそう声を聞いた。
「ここからは、解体だから」
  真凛は両拳の中指のみを立て。
「『耳掻き』」
  『毒竜』の両耳穴に、根元まで突っ込んだ。
 
  狂った獣の絶叫が、倉庫内に轟いた。
 
 
  軍人として充分以上のキャリアを積んできたはずの『毒竜』が、頭の中を抉られるという想像もしえない激痛に身をよじる。頭を振って暴れる『毒竜』、だが真凛はロデオのように巧みにバランスを取って肩車の体勢を維持する。ここでようやく、頭上の敵を叩き落とすべく、カギヅメが振るわれる。だがいかに筋力があれ、この体勢ではまともな威力など発揮できない。指を引き抜き、真凛は容易くその一撃を捌くと、そのまま左手で手首を捕る。右手で『毒竜』の長く延びたカギヅメに、甲の側から手をかけ。
「『爪切り』」
  四指のそれ、すべてを引き剥がした。今度は絶叫させる間も与えない。そのまま手首に添えた手を、つ、と動かす。繊細な場所を愛撫するかの如き動きで、たちまち『毒竜』の皮膚、筋繊維、骨、すべての構造を読み取り、その隙間に指を潜り込ませ。
『胡桃割』
  一気に握り潰した。まだ停まらない。そのまま耳の前、顎関節に指を挿しこみ。
『髭剃り』
  引き下ろした。がごんと音がして下顎が外れ、筋肉と皮膚だけでぶら下がる。
  それは戦闘と呼べるものではない。正に解体だった。七瀬式殺捉術の真骨頂にして、どうしようもない程合理的で凄惨な一面が、ここにある。強敵と相対した時、この流派は一撃必殺の打撃や華麗な投げ技など狙わない。拳技が得意な敵であればまず指を、次に手首を、肘を。蹴技が得意な敵であればその足指を、次に足首を、膝を。外側から内側へと、丁寧に丁寧に一箇所ずつ破壊していくのだ。城攻めでいえば、兵士武将を軒並み殺してまわり、最後に丸裸になった本丸を存分に焼き打ちするようなものだ。真凛自身、己の技がどれほど凄惨なものかは承知している。彼女にこの技法の使用が許可されるのは、私闘ニ非ズ、殺メル不可ズ、倒スニ難シ、の三条件が揃った時のみである。そしてこれでも真凛は加減している。本気であればまず眼を狙っていた。
  聴覚、カギヅメ、そしてブレスを吐き出す顎を破壊された『毒竜』は、己の脳の許容量を越える激痛に、もはや絶叫も出ない。並の人間ならここで痛覚が焼き切れていてもおかしくはない。だがそれでも、奴は最強の一角を占めるだけの相手だった。
「……ッ!!」
  もはや閉じる事も出来ない喉の奥から、ごぼり、と音がする。
  それは、奴の体内にありったけ蓄えられたブレスだった。顎が外れそれを吹き出す事は出来ずとも、周囲に吐き散らすことで真凛だけは確実に仕留めるつもりなのだ。頚椎を握りつぶして息の根でも止めない限り、こればかりは、真凛には防ぎようがない。
「おれがいなけりゃ、な」
  おれの得意ポジション、ライトからファーストへの送球の要領で、おれはその手に持った凶器――指向性地雷の残り一発を、思いっきり投げ込んだ。本来シャッターの役割をすべき下顎は、真凛に破壊されその機能をなさない。ベストシュート!奴の口の中にすっぽりと入り込む指向性地雷。奴が吐き出そうとするその前に、おれは光の速度で『鍵』を起動させる。
「『亘理陽司の』『投じた地雷の』」
  一瞬の時間は無限に引き伸ばされ、俺は世界に楔を打ちこむ。
「『その姿の』『維持を禁ずる』!」
  俺の能力は『禁ずる』事のみ。外に向けての鍵は、閉める事しか出来ないのだ。だから、地雷が爆発しない、という未来を全て、俺は禁ずる。
 
  どむ、と鈍い音が響いた。
  口の中で無数のゴム弾が炸裂し。
  ついに、『毒竜』は倒れ伏した。
 
 
 
「お疲れ」
  着地し、膝をついて大きく肩で息をする真凛に声をかける。
「ボクも、力に……なれたかな?」
  おれは右の掌を真凛に向けて差し出した。質問を質問で返す。
「これからもよろしく頼むぜ?アシスタント殿」
  きょとんとする真凛に、やがて理解の表情が浮かんだ。おれの掌に真凛の掌が打ち下ろされ、小気味の良い音を立てた。
「よろしく。……先輩!」
  おれはにやりと笑って、親指を上に突き出した。
  ……実は掌がじんじん腫れてたりするのだが、それは口にしなかった。仕事としては何よりまず、力加減を覚えてほしいところである。
 
 
「まだやりますか?」
  おれは入り口付近で一部始終を見守っていた鯨井さんに声をかけた。その背後では、密入国者の方々が不安そうに身を寄せ合っている。鯨井さんはゆっくりと首を横に振る。
「『定点観測者』に出来る事は観測だけ。観測したデータを用いる者がいなければ、私に出来る仕事はありませんよ。力づくでその帳簿を取り返したりする事も不可能です」
「ありゃ、気づいてましたか」
  おれはザックに仕舞い込んである、この倉庫の搬出入の記録や取引を記入してある帳簿を叩いた。真凛の救出に向かう前、どさくさに紛れて倉庫の管理室から引っ張り出してきたものである。今の倉庫内の惨状を思えば、その判断は誠に正しかったと言わざるをえない。
「『観測者』は見る事にだけは卓越しているんですよ」
「……これからどうするつもりですか?」
「さて。まずは帰って報告ですね。海鋼馬は初任で失敗する人間を使ってくれるほど温厚な組織でもなさそうですし。まあ、そのうちに考えるとします」
「そうですか……」
「私のことより、ね」
  鯨井さんは言葉を切った。
「これは海鋼馬のエージェント、『定点観測者』としてではなく。宗像研究室のOB鯨井としての言葉なのですがね」
  鯨井さんは、倉庫に積んであったバッグから、崩落に巻きこまれなかったものを二つ、取り出した。
「私の『観測』の結果、この二つ……いいえ、ここに置いてあったバッグ全てが、完全な同一品でした・・・・・・・・・
  おれは、その言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「そんな事は……」
「そう、絶対にあり得ないのです。しかし、現実はこの通りです。つまり。あなたの仕事・・・・・・と言うことですよ亘理君」
「……わかりました。情報、ありがとうございます」
  鯨井さんがふ、と顔を緩める。
「いい顔になりましたね、亘理君。これでは我々が不覚を取るのも仕方がないでしょう」
  さてさて、と鯨井さんは手を叩いた。
「『毒竜』や『狂蛇』の面々は私が面倒を見ます。あなた達は早く行きなさい」
「密入国の人達についてはそのまま警察に引き渡してください」
「ちょっと、陽司!?」
「大丈夫、というわけでもないが。須江貞サンのコネで、きちんと保護してもらえることになった。強制送還になるだろうけど、あとは所長のコネで真っ当に来れるルートを探す、てとこかな」
  漫画喫茶に篭って、今日の午後をほとんど費やしてこんなことをやっていたわけだ。地道に手続きを踏む、というのも一つの方法なのだ。彼等の窮状を放ってはおけない、さりとて密入国を見逃すわけにはいかない、となれば、おれの打てる手はこれくらいだった。
「なんかコネばっかりだね」
  でもありがとう、と真凛は言った。
「つーか、所長と須江貞さんの存在価値なんてコネだけみたいなもんだし。さて、行くか」
  おれは鯨井さんに目礼をすると、真凛に撤収の合図をした。
「それから、そこのお嬢さん」
「ボクですか?」
  ええ、と鯨井さんは真凛に向けて、
「今あなたが見ているこの亘理君を、よろしく頼みます」
  そんな事を言った。
「えっと、それはどういう……?」
「おーい、行くぞ」
「あー、うん!」
  おれは真凛に声をかけると、裏口の門を押し開けた。
  遠くから、ようやくパトカーのサイレンの音が近づいてくる。
  色々と長かった夜が、明けようとしていた。
 
 
 
 

◆◇◆ 14 ◇◆◇

 
 
「電話代。家賃。ネット代……光熱費。おおーっし!!どうにか九月を乗り切ったぜっ!」
  事務所のパソコンを借りて起動した家計簿に数字をすべて打ちこみ、おれはガッツポーズを取った。今月は特に金の出入りが激しく、非常に微妙な綱渡りではあったのだが。計算の結果、どうにか無事に来月を迎えられそうである。
  日曜深夜の死闘から、すでに二日が経過している。結局、ドタバタ騒ぎを駆けつけてやってきた警察に、ナガツマ東倉庫にあったモノ、居た人間は軒並み差し押さえられてしまった。もちろんおれ達は手遅れになる前にとっとと脱出し、警察がやってくる様を離れたところにあった終日営業のファミレスから見守っていたという次第。
「亘理さんが持ってきてくださった帳簿を判読した結果、倉庫内に収められていたプルトンのバッグは全て、東南アジア某国の工場で生産して『狂蛇』が密輸していたものと判明しました」
  ブラインドに遮られた西日が適度に差し込む事務所の中で、来音さんがいつものようにコーヒーを淹れてくれた。
「逮捕された『狂蛇』の構成員も同様の証言をしたわ」
  月末決済の様々な書類にハンコを乱れ打ちし終えた所長もこちらにやって来る。
「警察はこの証言をもとに『ミサギ・トレーティング』に製品の販売差し止めと回収を要請。ミサギは一応回収に動いているみたいだけど、回収率は目も当てられない低さだそうよ」
「ミサギは露骨にダミーカンパニーでしたからねえ。意欲だってあがらないでしょうよ。雲隠れされなかっただけでもマシな方なんじゃないですか?」
「それもあるんだけどね。買った人が回収に応じないケースがほとんどだそうよ。格安の値段で、どう見ても本物としか思えないものを買ったんだから、わざわざ返品する必要はない、って考えね」
「気持ちはわかりますがねぇ。結局、警察が踏み込んできてくれたおかげで公的に偽物と証明出来たわけですか。技術的に偽物と証明するのには恐らく不可能だろうし……。来音さんにはますます頭が上がりませんよ」
  異能力者同士の決着がつき、『狂蛇』の面々が気絶しているベストのタイミングで警察がかけつけて来たのは、来音さんの力によるところが大きい。
「でも、海外の工場で作っているところまでは突きとめられたとはいえ、実質的にどのように製法しているかは結局わからずじまいでしたね」
  おれは頷いた。さすがに海外までは足を伸ばせない。ここから先は警察と、……それからもう少し別の連中の領分になるだろう。
「依頼人の小栗さんもその点は気にしていたけどね。『狂蛇』の自白も取れたし、ルートはこれで潰れたわけで。納得してくれたわ。もっともこの先、海外まで乗り込んでいって根っこをつきとめる、なんて話も出てくるかも知れないけど」
「良かったですね陽司さん。会社のお金で海外に行けますよお」
「はっはっは、来音さん、海外という言葉がいつもリゾートホテルやビーチやカジノを指すと思ったら大間違いですよ、ねえ所長」
  うちの『海外出張』と言ったら、砂漠にテントを張りながらピラミッドの中枢潜入とか、針葉樹林の中を行軍しながら原子炉護衛とかそういった類のものだ。
「ま、それはそれとして。この夏はお疲れだったわね、亘理くん。ハイこれは同日複数依頼の特別ボーナス」
  所長がおれに何やらチケットを押し付けた。
「……映画っすか。『ムエタイVS地底人2 血闘!オリンポス』。恋愛映画ですか?」
「んなわけないでしょ」
「この秋公開のアクション映画ですよ。前作で死闘を演じたムエタイ使いと地底人がコンビを組んで、ギリシャの神様十六人とバーリトゥードで戦うお話です」
「どうやって入手したんですか?うち、新聞替えましたっけ?」
  てっきりおれは新聞勧誘員のおっちゃんから巻き上げたのではないかと思ったが。
「失礼な。ちゃんと取引先の株主優待券をブン獲って来たのよ」
  似たようなものだったらしい。っつーか、ボーナスってこれだけかよ。
「冗談よ。報酬の上積みの方は楽しみにしてなさい。驚くから」
  そりゃ驚くだろうさ、反対の意味で。いずれにせよ、滅多にない所長からの給料以外のプレゼントとあれば否やはない。
「おお我が殿、ソレガシに来音さんを映画に誘えと仰られる?善哉善哉。一命に替えても確かに果たしてごらんに入れまする」
「誰が殿よ」
  来音さんはいつものとおりの極上の笑み。
「残念です陽司さん、もっと相応しい方がいらっしゃるみたいなので、私は次回に」
「先約?」
「チームの固めの杯がわりってとこかしらね」
  階段を三段飛ばしでかけ上がる音が響いた、と思ったら。
「おそくなりましたー!」
  事務所の扉を開けて飛び込んでくるお子様一名。
「おせーよ、おい」
「ごめんごめん。英語の課外授業があってさ」
  通学用のカバンを下ろしながらおれの席にやってくる真凛。そういえばこいつにはまだ正式な席はなかったっけな。
「そんなもんやったって時間の無駄だって。チョイチョイと切り上げてだなあ、」
「でもさ、今後この仕事でも外国の人と会うことも多いでしょ?やっぱり英語話せた方が便利じゃないかなあ、って思って」
  おれは手持ちの書類を丸めると、真凛の肩を叩いた。
「それなら一番の近道は、学校での勉強を当てにしないことですゾ七瀬クン。高校受験をクリア出来る程度の単語力があれば、まずは実地の会話でベーシックな単語の組合せ方のコツを掴んだほうがずっと早く覚える」
「そーなんだ……。じゃあ、今度教えてよ。アンタ語学だけは得意だったよね」
「あーはいはい。早く覚えて楽サセテネ、我ガアシスタントドノ」
  振り返ると、所長と来音さんが口に手を当て、笑いをこらえていた。
「なんですか?所長?」
「んー。あなたたち少し雰囲気変わったかなあ、なんて」
  そりゃ気のせいですよバッチリ。ってちょっと待った。
「相応しいって、まさかコイツですか?」
「来音ちゃん、今日は早く退けたからラーメン食べに行こうかー」
  きらりと光る来音さんのメガネ。
「所長、早大前に新しい豚骨ラーメンの店がオープンしたと言う情報が」
「大盛ある?」
「無料です」
  即答であった。
「じゃそーいうことだから亘理くん。戸締りまかせたわよー」
  ドタドタガッチャン、と飛び出して行く疾風二名。……逃げられた。
「なに?先約って」
  そして事態を知らぬお子様一名。
  あー。はいはい。わーったわーったわーかりましたよ。
「……ホレ、これ。映画のチケットだよ。行くか?」
  ま、親睦会みたいなものがあってもいいだろう。
「陽司が?映画?うそ!?お金あるの?」
  って、第一疑問がそれかい。
「イヤならしょうがないけどよ」
「そんな事ないよ!えーと。『ムエタイVS地底人2 血闘!オリンポス』。恋愛映画かな?」
「んなわけねーだろ」
  十五分前の自分を遠い棚に放り投げて、おれはツッコんだ。いくつかの仕事に随分振り回された大学二年の夏休みだったが、最終日だけは、随分穏やかに過ぎていったようだ。
  ふと窓の外を見れば、澄み渡った秋空が夕陽に映えていた。
  九月も過ぎ行こうとするこの時期。ようやく世間は、秋らしさを見せ始めていた。
 
 
 
 

 

 

  

◆◇◆ ※ ◇◆◇

 

  

 

 

 

 

  

  ◆◇◆ ※ ◇◆◇

 

 

  

 

 

 

 

 

◆◇◆ ※ ◇◆◇

 

 
  ねずみ色の雲が厚い緞帳となって、空を覆っている。
  ゆうべ深夜から天気が崩れ、そのまま今日まで降りしきる雨。
  屋外にうち捨てられたトタンに弾ける雨音のリズムに包みこまれ、おれはじっと待っていた。北区、荒川沿いのとある廃工場。かつては工作機械が何台も賑やかに金属音を奏でていたであろう工場は、債権者によってか、あらゆる設備が剥ぎ取られ、床下の土塊すら露出していた。だだっぴろい空間の中、柱に背を預けて座りこむ事、既に一時間。
  まだ午後だと言うのに、日光は垂れ込める分厚い雨雲と、灯りの途絶えた窓の少ない建物に遮られ、部屋の端の壁すら満足に見えやしない。そのくせ、むき出しのコンクリートは、湿気と冷気を直に送り込んでくる。つい先日の長野の夜とは異なった、深々と染み込んでくる類の寒さだった。
  携帯兼音楽端末『アル話ルド君』の演奏が一周して止まる。ふとその液晶画面を見やり、映し出された日付を確認する。泥まみれで真凛と炎天下を歩き回ったあれから、百時間と経過していない事実に気づき愕然とする。ここ数日の気候の激変は、まるで、誰かが可能な限り引き伸ばしてきた夏が終わり、その代償を急速に取り立てられているかのようだった。気がつけば、九月も終わり。来週からはまた、大学の講義が始まる。
 
 
  ――ああ。そう言えばそうだった。
 
 
  今更ながらにそんな事に思いが到った。
 
 
  夏休みが終わるのか――
 
 
 
  ……ざりざりと小石を踏みしめる音が、おれのまどろみを断ち切る。イヤホンを引き抜くと、おれはよっこらせ、と無意識に呟いて身を起こした。
 
 
 
「……どーも、その節は」
  今ひとつかける言葉が思い浮かばなかったので、なんとも間の抜けた挨拶になった。廃工場にまさにやってきた男、『毒竜ファフニール』モルデカイ・ハイルブロンは、居合わせたおれの顔を見て明らかに面食らったようだった。
「……『ラプラス』の小僧か」
  そう呟くモルデカイの腕には、分厚いギブスが巻かれている。そして外れかかった顎を吊る為に、顔に対して縦に包帯を巻きつけており、それは頬かむりをしているようにも見えた。何とも無惨な話である。それは、先日まで業界に畏怖を持って知られた『毒竜』の二つ名が、完全に地に堕ちた様を示していた。おれは表情こそ変えなかったが、その気配は伝わってしまったのだろう。モルデカイの雰囲気が一層険悪になる。
「仕事は決着したはずだ。こんなところで何をしている?」
  エージェント業界の仁義――通常、どれほど熾烈な戦いを繰り広げたとて、その仕事が終了すれば、互いに遺恨を残さないのが暗黙の掟。奴自身がそれを守るかどうかは別として、言う事はもっともだ。が、
「そういうあんたは何でこんなところにいるんだ?」
  おれの質問に、モルデカイが不快げな表情を消し、こちらに視線を向ける。おれがどれ程の情報を握っているのか推し量っているのだろう。喧嘩の動力は怒り。戦闘の動力は義務感。そして、殺人の動力は必要性。モルデカイがおれを見る目は、急速に『派遣社員』のものではなくなっていった。時間を浪費するつもりは毛頭ないので、さっさと答える事とする。
「あんたの探してるのはコイツだろ」
  おれはこの倉庫に保管されていたバッグを放りやる。紛れもなく、プルトンのバッグだ。
「……」
「あんたの本当の依頼人について教えて欲しくってね」
  もつれたイヤホンのコードを胸ポケットに仕舞いつつ続ける。
「あんたが所属する海鋼馬と『狂蛇』の間にどういう契約が取り交わされたかは知らないけどさ。いくら重要な資金源の芽とは言え、通常は企業間の最後の切り札として、あるいは国家レベルの案件に投入される『S級』エージェントがこんな任務に就くとは到底思えないんだよね。ましてや、特に凶暴なアンタが」
  剣呑さを増して行く、前方の殺気。
「だけど、一つだけ、ここに仮説がある。プロの鑑定士が見破ろうとしても見破れない、完璧なコピー。これを作ろうとしたらどうすればいい?まっとうなバッグメーカーが精確な情報を得て全力を尽くせば出来るのかもしれないが、少なくとも某国で作業をして闇ルートに流すような後ろ暗い工場にはまずムリだろうな」
  おれはポケットに手を突っ込み、ゆっくりと歩きはじめる。
「では、エージェントによる異能力でのコピーはどうか。これも現実味が薄い。複製の魔術や錬金術も、実際の所万能じゃない。絵画を描くのと同じでね。形だけ似せるなら初心者でも出来るし、上級者ならまずバレないくらい良く似たものを、達人なら本物以上のものだって作り出せる。だけどね、完全に同じものは作り出せないんだ。よってこれもムリ。何でもアリのおれ達エージェントの業界ですら、理論上不可能って事さ」
  モルデカイを中心に円を描くように。奴は正面を見据えたまま動かない。
「ところが。この世界にはただ一つ、これを可能にする法則がある。いや、違うな。この世界を崩壊に導く、あってはならない法則がある。……この世の根幹を揺るがす、禁忌の力」
  モルデカイは動かない。
「……とある組織が、その禁断の力を手に入れたとする。その力とは、ありとあらゆるものを正確無比に、完璧に『複製』する。しかも時間が立つと消えてしまったりするわけじゃない。本当に、単純に一個が二個になるだけ。材料も必要ない。とんでもない能力だ」
  質量保存の法則など意味を成さない。悪用などそれこそ星の数だろう。例えば、金塊を倍々に増やすだけで、単純に一生遊んでいられるほどの財産を築く事が出来る。
「ところがその組織はそう金には困っていない。彼等はもっと別の事にその力を使いたかった。だから、実験をしてみた。多くの人に『複製』したものをばら撒き、誰か偽物と気付く人がいないか、確かめてみたかった。……つまり、連中にとっては偽物の売り上げによる利益なんかはどうでもよくて」
  半円を描ききる。おれは奴の背後に立った。
「ちゃんと『複製』出来るかどうかが問題だった。そしてそれを見届ける為に、お目付け役が必要だった。海鋼馬のエージェント、『毒竜』ではなく。戦場で多くの兵士を毒殺し、その後一時期消息を断っていた元傭兵……モルデカイ・ハイルブロン」
  返答はなし。
「ここまで言ってもわからない?そうか。じゃあ率直に言うよ」
  おれはポケットから手を抜いた。
「この下らない悪戯の仕掛人。あんたの本当の飼い主。最低最悪のエージェント――『誰かの悪夢バッドジョーカー』。今、どこに居る?」
  背を向けたまま、モルデカイは声を上げる。
「――何故、今聞く?聞きたければ俺を倒したあの時に聞けば良かろう」
「あれは仕事の上での戦闘だ。プライベートを持ち込む事は出来ない」
  その肩が震えた。笑っているのだろう。
「つくづくお目出度いな、『ラプラス』!!それともまさか、負傷している俺を御する事など容易いと思ったか?」
  次の瞬間。振り向き様に振るわれたカギ爪が、おれの胴を薙ぎ払った。両腕をハネ上げて身を浮かす。ガードした腕に衝撃が弾け、おれは工場の壁まで容易く吹き飛ばされた。服の下に着込んでいる防弾防刃ギア『インナー』すらざっくりと切り裂かれ、おれの腕に浅くない切り傷を刻み込んでいる。皮膚もダメ。筋繊維までイったな、こりゃ。
「俺の生命力を甘く見たな。三日もあれば、この程度の傷は全て塞がる」
  膨れ上がった腕の筋肉に負け、奴のギブスが吹き飛ぶ。同様に、顎を覆っている包帯も千切れて落ちた。その下には、先日真凛にズタズタにされたはずの傷痕は毛ほども残っていなかった。おれの顔を見やって、モルデカイが嘲笑を浮かべる。
「『ラプラス』。因果使い。確かに厄介極まりない能力だが、その分制限も多い。望む事象を明確に言葉で発音しなければならないこと。捻じ曲げられるのは一瞬の出来事のみ。回数にも恐らく限りがあるだろう。そして長期または恒久的に現実を都合よく捻じ曲げる事は出来ない」
「ついでに言うと、言葉は必ず否定形で定義しなきゃいけないってのもあったりするんだけどね」
  おれは皮肉っぽく呟いた。奴はおれの様を見やって、あの野太い嘲笑を復活させる。
「結論からすれば。俺とお前の地力の差は、一度や二度の命中や回避を捻じ曲げたくらいでは埋め合わせが出来るものではないという事だ!」
  突進からの刺突。致命傷になりうる一撃だった。高速で精神をシフト。
 
「『モルデカイの』『攻撃は』『亘理陽司に』『当たらない』!」
 
  だがそれだけでは、とてもではないが確率が低く負荷がきつい。同時に横方向に飛ぶ。モルデカイの突き出したカギヅメは、俺の代わりに俺が背にした壁を大きく斬り裂いて止まった。
  おれは安堵のため息、だがそこに、続けざまに膝が飛んできた。
「痛ぅ……」
  因果の鍵は一瞬しか機能しない。おれはその一撃をまともにくらい、地面に吹き飛ばされた。ダメージをチェック。あっちゃ、肝臓が破れたらしい。少し遅れて吐き気と脂汗が押し寄せてくる。
「見誤ったな小僧。俺の本領は甘っちょろいエージェントではなくて実戦こちら側だ。生ぬるい手加減の必要がない分、気兼ねなく戦えると言うものよ」
「奇遇だね。おれもさ」
  おれの減らず口を鼻で笑い、見下ろすモルデカイ。その肺腑が膨らみ、大量に取り込んだ空気を圧縮していく。
「死ね」
  子供の喧嘩ならいざ知らず。この業界で『死ね』という言葉は、明確な殺傷の意志を意味する。奴は本気で、おれを殺すつもりだった。
 
 
  ――意識の裏。古ぼけた抽斗から鍵をもう一度取り出す。
  おれは鍵を俺に渡して、俺を自由にさせた。
 
 
『我は』『亘理陽司に』『非ず』――『無数の名を持ち、だが全ては無意味』
 
 
「……仕事の上の戦闘だったからってのは確かに理由なんだが」
「ぬ!?」
  奴はおれの様子に気づいた。
「わりとほれ、自分で言うのもなんだけど、おれ小心者でさあ」
 
 
  俺は鍵を、外ではなく内側に向ける。
  そこには、ずらりと並んだ36の抽斗があった。
  そのうちのおよそ半分には、厳重に封を施されている。
  残りの半分は、未だ空白のまま。
  さて。
  陳列されたエセ天使どもを前にひとりごちる。
  どれを出すか。
 
 
『我は』『人に』『非ず』――『万能の工具、而して意志を許されず』
 
 
  おれの周囲の空気が歪んで行く。
  その異様さに圧されて、モルデカイは振り上げた腕を下せない。
「仮にもオンナノコの前で、こいつを見られたくはないっつう純情チックな個人的な事情もあるんだよね」
  これだけは、いくらアシスタントでもな。
「貴様……何者だ?」
  おれはその問いに答えなかった。
「それから、言いそびれてて悪かったが、一つ訂正がある。おれは『ラプラス』じゃないよ」
  そう名乗った事は一度も無いはずなのだが。噂とは一人歩きするものらしい。まあ、おかげで面倒事に巻き込まれるのが少しは減らせるわけだが。
「おれが『ラプラス』だったら、アンタは戦闘開始一秒後に死んでたぜ」
  大見得を切ったわけでもなく、掛け値抜きに一秒なのである。
  おれは『外の世界に鍵をかけ』、自分に都合の悪い未来を封じてまわる事で、もっとも都合のいい因果を確実に手に入れる。すごろくで6が出るまでサイコロを振りなおすようなものだ。だが、『ラプラス』の能力は全く別物である。『外の世界の情報を計算しつくし』、サイコロを振るときの手の動きや力の入れ方、周囲の空気の流れ、サイコロが落ちるテーブルの固さ、全てを計算しつくして、4だろうが5だろうが6だろうが好きな目を出せる。おれなど到底足元にも及ばない。うちの事務所の良識派ではあるが、敵に回すと多分あの人が一番おっかない。
「どっちかっていうと、おれの能力はラプラスとは対になるんだよな。おれが持っているのは、あくまでただひとつの『鍵』。それ以上でも以下でもない」
 
  そう。我が師より受け継ぎしはただ一つの鍵。
 
  その『鍵』で、外側を封ずるのではなく。 内側を開く ・・・・・ことにより。
 
 
  ……やはりこれか。
  俺は、7番目の抽斗に鍵を差し込んだ。
 
 
『我は』『つなぐものに』『非ず』――『斬界の主。創世の鉈となりし切断者』
 
 
  歪んだ空気が軋み、凍る。
「――この世界はね。突拍子もない事象があるように見えて、海も山も宇宙も。ついでにこの世もあの世も魔術も呪術も天使も悪魔も精霊も時間も。きちんとバランスが取られて作られている、綺麗な箱庭さ。魔術だの悪魔だのは、必要ない人間の前には存在しないし、必要な人間の前にはちゃんと存在する。それはそれで、この世界を管理している奴の想定範囲内って事」
 
 
  俺は鍵穴を廻す。
  封が解かれる。
  抽斗に眠っていたソレは、音もなく這い出し。
 
 
『我は』『真実を告げるものに』『非ず』――『而して我、亘理陽司也』
 
 
  俺から取り外された「おれ」のピースの代わりに。
  ガチリと俺に接続された。
 
 
  おれはゆっくりと立ち上がる。
「ところがね。……つい数年前なんだけど。とある馬鹿な奴が、この世界にある綻びから、とんでもないバケモノを36体程呼び込んじまったんだ。散らばったそいつらは、いずれもこの世界の法則に縛られることなく、ブッチギリで反則な事をやりだしたんだ」
  顔の前に両手を交差し、額に意識を集中する。
「んで。紆余曲折あって、エライ人達は、そのバケモノを狩り、封印させる事にしたのさ。……因果の『鍵』を矛盾させることで己の意識に綻びを生じさせ、そこから同じバケモノを呼び出す事が出来る人間によって」
 
 
『亘理陽司の』『名に於いて来たれ汝』
『――空の七位。” 天地裁断の鋼独楽グローディス”!!』
 
 
  最後に。おれは乾いた笑みを、奴に投げかける。
  名乗りは好きではない。だがそれが、せめてもの仁義であった。
「人材派遣会社フレイムアップスタッフ。魔神使い。『召喚師』――亘理陽司」
 
 
  おれは舞台の袖に引っ込む。
  前座に代わり、化粧を終えた主役が、舞台に上がる。
 
  ――そして。
 
  俺は目を開いた。
 
 
 
 
  周囲の空間が軋む。
 
  俺に触れた空気が弾き飛ばされ渦を巻き、廃工場の屋根を、柱を圧迫する。
  それはいわば、波だった。
  水の満たされた器に石を投げ込めば波紋が生じるように。
  この世界に、在ってはならぬものが投げ込まれた為に生まれた震動だった。
  俺と対峙するモルデカイの顔に明確な焦りが浮かぶ。奴とてそれなりに手練。目の前の存在が如何なるものか、多少は推測できたらしい。俺は奴に向けて、無造作に三歩、歩み寄る。
「どうした。射程圏内だぞ」
  俺の挑発に、我を取り戻したか――あるいは、他に選択肢がなかったのか。奴はそのカギヅメを振りおろす。
  鋼鉄をも斬り裂く爪は、だが掲げた俺の生身の腕に……いや、腕の前方に作り出された 空間の隙間・・・・・に阻まれていた。ありえない光景に、奴の顔が恐怖に歪む。
  俺は、亘理陽司の意識をいじる。技術的な事はどうでもいい。無意識、本能の抑制を解除。生物学的な限界も無視。ただ単に、この細胞の集合体の構造から繰り出せる理論上の最高値の出力で。
  そのまま拳を奴の腹に撃ち込んだ。
「……!!」
  長身の大男が塵芥のように宙を舞う様は、見ていて中々興味深い。
  想定外、いや規格外の酷使に、打撃に使用した腕の骨、筋肉、神経が一瞬で破損し、痛覚信号を送り込んでくる。膝や背中も同様だ。
「この程度の準備運動で音を上げるとは」
  日を追ってやわになっていくこの体が鬱陶しい。俺は痛覚信号を遮断し、次の一合に備えた。今一度を期してか、奴は己の力を全開にし、竜の力を以って迫り来る。
 
  だが遅い。
  俺は指を打ちならした。
「斬れ。”グローディス”」
 
 
  ”――『承知』”
 
  俺の意識野に 召喚ダウンロードされている魔神が応じる。俺にのみ幻視出来るその姿――禍々しい銀色に輝く、無骨な刃を纏った独楽――が、その歯車を回す。歯車はその鋭利な剣で周囲の空間を巻き込み。
 
  奴の腕が、宙空で切断された。
 
「――え?」
  奴が阿呆のような声を上げる。それも当然か。俺と奴の間の距離は六メートル。相手の攻撃を見落とす距離ではない。風斬や雷撃を操る遠距離攻撃の能力者でさえ、能力を発動するための予備動作が必要になるだろう。これを覆せるのは射撃の達人の抜き打ちくらいのものだが、それとて、斬撃を仕掛ける事は出来ない。
「……貴様、一体何をした?」
  ここでようやく、腕の切断面から大量の血液が吹き出した。俺は退屈そうな表情を崩さず、打ち鳴らしたままの人指し指を奴に突きつけた。
「ああ。『斬った』のだ」
  モルデカイの顔は失血とショックによって蒼白になっている。だが、奴の体内の竜の血とやらはよほど大した物なのか、急速に止血が進んでいるようだった。
「ありえん……!銃弾すら通さぬ俺の腕を……!!」
「それはそうだ。俺はお前の腕ではない。お前の腕の空間を斬ったのだから」
「なん……だと?」
  俺はやれやれと後頭部を掻いた。このあたりの仕草は、”おれ”だった時の影響が如実に残っているところであろう。
「俺が召喚した魔神は、それぞれ一つの『特性』を持つ。『おれ』が居る時のように、状況に応じて因果を捻じ曲げたりと言った繊細な事は出来ないが。代わりに、それぞれが『特性』においては絶対的な力を持つ」
  謳うように俺は言葉を紡いだ。
「7番目に位置するもの――天地を裁断する鋼の独楽、『グローディス』。その特性は『切断』。通常の刃物や風圧による斬撃とは全く違う。その物体が存在している空間そのものを斬り裂いてしまうため、物質の硬度は関係ない。射程距離および効果範囲無制限、使用回数および同時発動回数無制限、防御力無視、着弾所要時間ゼロ。……もっと端的に、『何でもあり』と言えば多少は理解して貰えるだろうか?」
  俺の述べた仕様。それがどれほど出鱈目なモノなのか、モルデカイにはようやく理解出来たようだ。常人では想像もつかない力を操るエージェント達であるが、どんな力も発動させるためには『燃料』が必要だ。武術の達人の拳とて、突き詰めれば食物から摂り出されるエネルギーで動いている。サイボーグの銃弾とて、火薬や電力で撃ちだされる。魔術師の紡ぐ複雑な術式や超能力者の一撃とて、魔力や精神力、自然の力を代償としている。エネルギーが必要とされる以上、その力には限りがある。自分の力か周囲の力か、変換効率が良いか悪いかは別として、基本的に投入したエネルギー以上の力を使う事は出来ない。
  それは、これらの力がいずれもこの世界の根本的な法則に従っているからだ。例えて言うなら、一つの盤の上でやり取りされるルールが凄まじく複雑になった将棋のようなもの。効率的な技、ルールの隙間をついた技、特別ルールを利用した技。普通の人が知らないルール。色々あるが、所詮は盤の中の出来事だ。だが。
 
  俺の能力は、違うのだ。
  何人もが将棋を指して遊んでいる盤に、いきなり鉈を振り降ろして敵の王将を叩き割るようなものだ。精妙なルールも何もあったものではない。少し力加減を誤れば、盤が壊れて二度と誰も将棋を指せなくなってしまう。だからこそ最強。だからこそ最悪の能力だった。
「生憎と濫用出来るものでもない。俺がこの力を使う事を許されるのは、この世界に紛れ込んだ他の連中を狩り出す時――すなわち、今だ」
  ……そしてペナルティも確実に存在する。自らの意識野に別のモノを 召喚ダウンロードするという事は、多かれ少なかれ、意識が”混じってしまう”事を意味する。使い続けるうちに、どこまでが本当に自分の意識だったかわからなくなってしまうのだ。……かつて俺が、”おれ”だった事を思い出せないように。
  だが、今となってはもはや些細なことだ。ひとつヒビの入った器にはもう美術的な価値はない。あとは機能的な価値。割れるか割れないかだけが問題なのだ。
  奴は瓦礫を押しのけ起き上がる。本能的に、これが自分に許された最後の反撃の機会だと理解していたのだろう。
  がぁぁぁあああっ――!!
  吐き出される猛毒の煙。この工場のみならず周囲にすら壊滅的な被害をもたらしたであろうそれは。
「囲め。”グローディス”」
 
  ”――『承知』”
 
  振るわれる、六回の斬撃。致死の毒ガスは、拡散する以前に、俺が遮断した立方体の空間の中に囚われていた。
「切断、という概念も使い様だ。こうやって空間そのものを遮断する事も出来る」
「……馬鹿、な」
  最後の一撃をこともなげに封じられ、今や完全に進退極まった態のモルデカイに俺は掌を向ける。
「だから言っただろう。何でもあり、だと」
  俺は立方体を解除する。拡散することなく空気と混じりあってしまった毒ガスが無力化し、拡散していく。
「もう一度聞こう。――『 誰かの悪夢バッドジョーカー』。奴は今何処にいる?」
  三秒。葛藤があった。奴は迷い、絶望し――そして、諦めた。
「は、ははは。なあ、『召喚師』。お前はまさしくバケモノだよ」
  奴は、ゆっくりと後へ下がる。
「だが比較の問題だ。お前より、俺は奴の方が怖い。だから喋らない」
  振り上げられる左腕。だが、俺がそれに照準を合わせるより早く、その左腕は、奴自身の胸板を貫いた。
「……残念だったな。『 毒竜ファフニール』の死因は心臓を一突き。そして呪いの言葉を吐きながら逝くと、神話の時代より決まっているのだ」
  肋骨の隙間に開いた穴から血を撒き散らしつつげらげらと笑う。奴は、避けられない死を目前にしたもの特有の、恐れるもののない表情で呪詛を吐いた。
「くたばれ、『召喚師』。貴様は無意味に死ね。そして誰からも、忘れられるがいい。お前がいた事など、誰も気には止めず、墓碑に名を刻むものはない――」
り潰せ。”グローディス”」
  指を打ち鳴らす。
 
  ”――『承知』”
 
  空間が断裂する。奴の首が飛んだ。その首が落ちる前に、さらに首と身体が縦に割れる。縦に、横に。斜めに。上に、下に。制限無し、物理特性を意に介さない空間切断。一秒で千回。二秒で一万回。三秒で十万回。子供が白紙を鉛筆で塗りつぶすように、丹念に丹念に塗り重ねられてゆく斬撃。千切り。微塵切り。それはやがてミキサーと化し。
  モルデカイ・ハイルブロンと呼ばれた人間を、ミクロン単位で分解した。
 
 
 
  空気の流れに押し出され、かつて人間だったものの粒子が大量に飛散してゆく。血煙すら上がらない。それは何かの冗談のような光景だった。
「――大当たりだよ、『毒竜』」
  おれは薄れて行く靄にそう呼びかけた。
「どうせ崩壊間近のポンコツだ。だったらせめて消え逝くまでには、全部回収して片をつけないとな」
  破損した天井から、雨が吹き込んでくる。
  その雨に身を晒し、おれはしばらくの間、立ち尽くしていた。
 
 
 
 

 

 ◆◇◆ ※ ◇◆◇

 
 
23:10:08 *****16ポンド さんが入室しました********
23:10:17 Sir Oct >
きたきた
23:10:23 BadJoker@幹事 >全員そろったかな
23:11:02 16ポンド >遅くなったっス
23:11:12 Sir Oct >どーもー
23:12:45 Mitsu-ME >遅いよあんた……って、二ヵ月前をトレースするのはこのへんで
23:13:19 BadJoker@幹事 >ういうい。じゃーさっそく。だっめじゃーん
23:14:05 16ポンド >面目次第もないっス。蛇さんはシバいときました
23:14:32 Mitsu-ME >蛇さんの頭に哀悼。何人切ったんだー
23:15:51 16ポンド >8人。東京湾に沈めたっス〜。妥当なトコでしょ
23:16:14 Sir Oct >しかしこれじゃ投資が回収できないぞ
23:17:00 BadJoker@幹事 >まあ、利益回収は二の次だったっしょ
23:17:12 Mitsu-ME >途上国の工場一個くらいでガタガタ言うない
23:17:56 16ポンド >ごめんス。来月大陸でお祭りやるんでそれで取り返して
23:18:30 Sir Oct >香港?
23:18:59 16ポンド >上海。相場動かすんで銀行一個潰すっスヨー
23:19:45 Sir Oct >了解。張っとくわ
23:21:01 BadJoker@幹事 >(……海鋼馬の人達カワイソ)で、14番の人は?
23:22:20 16ポンド >何の変わりもなく手芸にいそしんでおりまっス(笑
23:23:09 Sir Oct >ああ。じゃあ宿主は割と普通の人だった?
23:23:45 16ポンド >『複製』使いとはいえまだ十代っスよお
23:24:18 Mitsu-ME >競争相手が少ないのは良いことだ
23:24:31 BadJoker@幹事 >いつまでもカバン複製させとくわけにもいかんでしょ
23:24:53 16ポンド >本人も大分使いこなせるようになってきたっスね
23:26:10 BadJoker@幹事 >じゃあ、次はみっちゃんとこに廻して増やしてみますか
23:27:01 Mitsu-ME >いいのか?あんまり開始前に俺ばかり手札を増やしちゃ
23:27:56 BadJoker@幹事 >だいじょぶ、みんな反則技使う気満々だし(笑
23:28:10 Sir Oct >(苦笑)
23:28:21 16ポンド >なんのことでせう?(笑
23:29:16 Mitsu-ME >そーゆう事なら遠慮なく
23:30:46 Sir Oct >自家用ジェットを増やしたら私にくれ(笑
23:31:18 Mitsu-ME >わかったわかった
23:34:50 16ポンド >それでねえ、失敗したスタッフさんなんスけど
23:35:20 Mitsu-ME >いたねそんなの
23:35:45 BadJoker@幹事 >モルちん使えなかったなあ
23:36:03 Sir Oct >あれでS級ってのはなあ。誇大広告じゃないか
23:36:58 16ポンド >いやあ。どうやらやったのが清掃係の人らしいんスよ
23:38:12 Sir Oct >あー……
23:40:43 Mitsu-ME >出てきたか、7番持ち
23:41:09 16ポンド >で、どうするかって相談なんスけどね
23:42:33 BadJoker@幹事 >”ゲームに茶々を入れる奴は、参加者全員で潰す”
23:43:01 Sir Oct >方針に変わり無しだな
23:44:05 16ポンド >はいはい。それを確認しておきたかったわけで
23:44:32 Mitsu-ME >まだ実害があるレベルじゃないだろう?
23:45:28 Sir Oct >まあ。いずれ全員出揃ったら、必然的に排除するだろう
23:46:39 Mitsu-ME >雑魚をまとめておいてくれる分には有用かな
23:47:52 BadJoker@幹事 >仕留めた人が、清掃係が溜込んだ番号をゲットすりゃいいよ
23:50:00 Sir Oct >早いもの勝ちということか
23:51:35 16ポンド >面白そうだ
23:51:45 Mitsu-ME >俺も興味があるな
23:53:42 BadJoker@幹事 >じゃあ、定例会議はこんなとこで。あと何かある?
23:55:20 Sir Oct >ちょっとみっちゃんと石油の情報交換しておきたいな
23:56:16 16ポンド >さすがワーカホリック。てかもう金要らんでしょ
23:56:50 Sir Oct >もうこうなると、どこまで稼げるかってゲームだな(笑
23:57:15 Mitsu-ME >長引きそうなんで別の部屋で
23:58:58 BadJoker@幹事 >ういうい。ここは落とします〜
23:59:01 *****Mitsu-ME さんが退室しました********
23:59:30 *****Sir Oct さんが退室しました********
23:59:45 *****16ポンド さんが退室しました********

00:00:00 BadJoker@幹事 >ま、せいぜい頑張ることだね、『召喚師』
00:00:12 *****BadJoker@幹事 さんが退室しました********
 
 

[了]ID:SFN0004v102

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