TRPGリプレイ 『人材派遣のCCC 外伝』 

『クリーンナップ・クリアランス』


 

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 ●PREPLAY
 
  某月某日某場所に、またまた一人のGMと三人のプレイヤーが集まった。となれば当然、TRPG以外にやることはない。
 
GM:さーて、みんな集まったことだし早速始めようか。今日はこのサークルとしては珍しく、世間様の最新ゲームである『ダブルクロス 3rdエディション』(以下:DX)をプレイしてみようかと思う。
プレイヤー2:そりゃ異論はないけど……キャラクターは何も考えてないよ。サンプルキャラを使うの?
GM:なーにをおっしゃいます。君達には既に持ちキャラがあるじゃないか。
 
  そう言ってGMが取り出したるは、一枚のCD。
 
プレイヤー1:こ、これは……『人材派遣のCCC』のドラマCDだな。
GM:そ。せっかくドラマCDも出来たことだし、久しぶりに第一部のキャラクターでプレイしてみるのもいいんじゃないかと。
プレイヤー3:ふむ。DXのルールで、世界設定は派遣シリーズを使うと言うことか。さしずめ『人材派遣ステージ』というところかな。
GM:そのとおり。こっちも向こうも異能力者が主人公、って点で馴染みやすいかと思ってね。もっとも、本家DXが、『能力に目覚めて変わってしまった日常』なのに対して、こちらは『能力に目覚めたのに何も変わらなかった日常』なわけですが(笑)。
プレイヤー3:ルールが変わっても貧乏なのは相変わらずか(苦笑)。
プレイヤー1:……けどさあ。あれだけキレイに第一部完!ってやったのに続編ってのはどうなんだ?(笑)まあコイツらをプレイするのは楽しいからいいけど……。
プレイヤー2:それに、今日は東野さんのプレイヤーいないから、チームが組めないよ?
 
  東野さんのプレイヤーはリアルに海の向こうで活躍中なのである。
  リアルでの全員集合も、そろそろ難しくなってきた社会人サークルであった。

 
GM:大丈夫、そこら辺はちょっと考えがあるから。気にせず第一部キャラを演じてくれたまえ。
プレイヤー1(以下、乾史):んじゃ、そういうことなら……戻るとするか!犬神乾史、十五歳。通り名とかはないっ!
プレイヤー2(以下、理流):贋作師フェイカー 』、有本理流、だぞ。……なんか久しぶり〜(笑)。
プレイヤー3(以下、十三):符屋ペイパーカンパニー』鷂十三、三十二歳。……三十二歳かあ(苦笑)。作成当時はプレイヤーよりもずっと年上のキャラを作ったつもりだったが……。
理流:もうずいぶん差が縮まってきたわね(笑)。
GM:それだけ付き合いも長いということで。じゃあ、本家DXにならって、トレーラーを読み上げるとしましょう。
一同:はーい。
 
 
●トレーラー

 
  世の中には『派遣会社』というものがある。
  『能力』を持った人間を『しかるべき職場』に派遣して
  案件を処理させるというものだ。
  これまでそんな『派遣会社』の世界、
  『ちょっと違った能力』を持った人間達が派遣される
  『しかるべき職場』の話をこれまで幾つか語ってきた。
 
  だが、彼ら『ちょっと違った能力』を持った人間達は
  そもそもどこからやってきたのか。
  それを知るものはあまりない。
 
  そんな『派遣社員』達の一面、
  彼らがいかにして『派遣会社』に集うこととなったのかを
  たまには語ってみるとしよう……。
 
乾史:……おお、ってえことは本編が始まる前の話か!?
GM:はい、今回は君達がチームを組む直前のお話です。まあシステムにDXを使うこともあって、本筋からややはずれた外伝的な話をやってみようかと。
理流:ちなみにこれ、シナリオ失敗したらどうなるのかしら?
乾史:きっと無かったことにされるんだぜ(笑)。
GM:さてどうでしょう(苦笑)。ちなみに東野さんはこの時期、北の某国と蟹の漁業権を巡るトラブルの解決のため、船上の人となっている(笑)。
十三:……ああ、小説の方で活躍中と言うことか(笑)。
GM:そう。今回のシナリオに参加するのは君達三人なのだ。ではトレーラーに続いて、ハンドアウトいってみよう。まずは乾史!
 
 
◆犬神乾史用ハンドアウト
 
ロイス:『零課の鬼』
推奨感情:ポジティブ:誠意/ネガティブ:憎悪

 
  不覚を取った。新宿のストリートキッズのリーダーたる君が、よもや警察に補導されてしまうとは。いくら相手がこの男……すっかり馴染みとなった『零課の鬼』山岐刑事とはいえ。
  だが今日は、耳にタコが出来るほど聞かされた「シャカイフッキしろ」のお説教はなかった。代わりに、陰鬱な表情のまま山岐は告げた――。
「近いうちに、区と警察の合同キャンペーン”きれいな新宿運動”が実施される。もうじき、お前も、お前の根城も仲間も、すべてこの街から排除されることになるだろう」 と。
 
乾史:お、ついに俺の保護司が登場か。
GM:まだこの時点では保護司じゃないけどね。山岐刑事の演出に希望はある?
乾史:そうだなあ……基本的に寡黙で、いつも二言三言しかしゃべらない。このおっさんも実は能力者で、得意技は『遠当て』。言霊の力で遠くの相手を吹き飛ばすって設定を考えてた。
GM:りょーかい。
乾史:てか、俺ってもしかして、この時点ではまだCCCに所属してない?
GM:うむ!今回は君がまだ君がストリートキッズのリーダーとしてブイブイ言わせていた頃の話だ!
乾史:……成る程ね。プレイの方針が定まった(笑)。
十三:しかし気になる単語が出てきているな。『きれいな新宿運動』か。
理流:街の清掃キャンペーン、ってわけはないわよねぇ。
GM:まあそこはおいおい。
 
 
◆有本理流用ハンドアウト
 
ロイス:『新宿の狂犬』
推奨感情:ポジティブ:好奇心/ネガティブ:不安

 
  営業部の麻生さんから、君はめずらしく一人で呼び出しを受けた。
  通常の任務と異なり、今回は麻生さん直々の依頼だという。なんでも、以前から目をつけていた『新宿の狂犬』という少年を、今のうちにCCCにスカウトしたいのだそうだ。
  麻生さんにそこまで言わせるほどの少年。興味がわいた君は、さっそく準備を整え、新宿の裏通りへと向かった。
 
理流:え、私一人の任務?しかも『新宿の狂犬』って乾史君の事じゃなかったっけ?
十三:犬神君の事だな。
乾史:俺がCCCに所属するキッカケになるストーリー、ってことか?
GM:それは理流の頑張り次第だなあ(笑)。
十三:人材スカウトをよりによって有本君に頼むとは、CCCの人材もいよいよ枯渇したか。移籍を考えなくてはな(笑)。
理流:そんなことないぞ〜。私は面倒見良いんだぞっ。
乾史:面倒見は良いかもしれないけど、人の話は聞かないじゃん。
理流:うん!(爆笑)
十三:人の話を聞かないでどうやってスカウトするつもりかね。
理流:こう、縄で縛ってえいっと(笑)。
乾史:それはただの人さらいだ!
GM:じゃ、次は十三〜。
 
 
◆鷂十三用ハンドアウト
 
ロイス:大里トヨ
推奨感情:ポジティブ:感服/ネガティブ:食傷

 
  君は後悔していた。
  君の務める銀行に、新宿のあちこちにアパートやビルを持つ資産家、大里トヨから「死ぬ前に不動産を処分したい」との要請があったのが一ヶ月前。ところが君が弾きだした良心的な評価額にも、トヨは「もっと額は高いはずだ」の一点張り。上司は上司で君に「なんとしてでも今の額で落とせ」と毎日のように要求してくる。
「近所でも評判の業突ババア」を相手に攻めあぐねていたある日。
  君は近く『きれいな新宿運動』が実施されるという噂を耳にした……。
 
十三:上司からの無理難題とは……のっけからハードな展開だな。
理流:今回十三さんはCCCの仕事を受けているんじゃないんだ。
乾史:あれ、そういえばいつもの『任務概要』で参加する人は誰も居ないのか。
GM:はい。せっかくみんなバラバラの状態なので、十三さんも今までにないタイプの導入にしてみました。
十三:ここにも『きれいな新宿運動』が絡んできているのか。それにしてもこのご老人、不動産を売りたいと言っておきながら駄々を捏ねるとは、一体何を考えているのだろう。
乾史:十三が見積もりをケチってるせいじゃね?
十三:失礼な、銀行員としてまっとうな評価額を提示している……んだよね?GM。
GM:うい、そこに関してはハンドアウトの通りです。まあ、詳しくはオープニングで。 
 
  ×      ×      ×
 
GM:では以上を踏まえてレベルアップ……もとい、自分のキャラをDXのルールにコンバートしてくれたまえ。
乾史:技能やエフェクトは好きにとっていいのか?
GM:自キャラのイメージはすでに固まっているだろうし、フルスクラッチで自由に作って良いよ。ただしDXで各キャラの基本能力となっている《ワーディング》は、このステージでは経験値を消費して取得しないと使用できない。いかに人目につかないようにこっそり戦うか、というのも派遣シリーズの肝だからね。
十三:ということは、経験値さえ消費すれば別に取得してもかまわない?
GM:もちろんです。十三さん本来の『払の符』はこれで表現してくださいな。
十三:了解だ。一人は持っていないと困るし、全員が持っているとそれはそれで問題な気がする(笑)。
乾史:理流が《ワーディング》持ちだとホントに歯止めがきかないからなあ。
理流:むー、ちゃんとTPOぐらいわきまえているんだぞっ。
十三:どの口が言うか(笑)。……さて、早速作るとするか。
乾史:うし、ダイスをいっぱい振れるキャラを作るぞ。
 
  わいわいがやがやとキャラクターのコンバートを始める一同。
  こういうとき、持ちキャラのないGMはちょっと寂しいものである。

 
 
◆DXにおける用語の説明
 
  先述のように、今回はルールとして富士見書房刊『ダブルクロス 3rd Edition』(DX)を使用します。
  DXの世界ではいくつか特殊な用語を使用するため、下記にリプレイを読むに当たっての最低限の解説を記載します。さらなる詳細については、市販のリプレイ、ルールブックを参照下さい。
 
※シンドローム……そのPCが使用する能力の系統。DXには12のシンドロームがあり、それぞれサラマンダー(熱、冷気を操る)、ブラム・ストーカー(血液を操る)などと名付けられている。PC達は12のシンドロームの中から1〜3種を取得することが出来る。
 
※エフェクト……いわゆる超能力。シンドロームごとに取得できるエフェクトが決まっている。
 
※侵食率……そのPCが「どれだけ自分の力に呑まれつつあるか」を表すもの。PC達はエフェクトを使用する度に、『侵食率』が上昇していく。侵食率が高くなればなるほどさらに強力な力を発揮できるが、同時に「力に呑まれ」暴走するリスクも高まっていく。
 
※ロイス……PC達の「家族や旧友との絆」、「宿敵との因縁」、「シナリオで出会った登場人物への印象」など、他者との関係を表すもの。これがあることにより、侵食率の上昇で「力に呑まれ」ることなく踏みとどまることができる。
 
※タイタス……ロイスを結んでいた相手が「裏切った」「死亡した」「別れを告げた」など、”縁を切った/縁が切れてしまった”時、タイタスとなり、ロイスとしての効果を失う。しかしPCはこのタイタスを「昇華」することで、瀕死状態からの復活、攻撃力の増加など爆発的な効果を発揮することが出来る(任意でタイタス化することも出来る)。これにより、マンガやアニメにある「アイツのためにもこんなところで倒れていられるか!」「テメェだけは必ずぶっ倒す!」を演出できるようになっている。
 
※《ワーディング》……周囲に特殊な物質を散布し、一般人を無力化するエフェクト。本来、DXに登場するキャラクターは皆このエフェクトを取得しているため、いざ戦いとなれば気兼ねなく己の能力を解放できるのである。
 
※《リザレクト》……PC全員が備えている基本のエフェクト。ダメージを受けてHPが0になっても、侵食率が100%になっていなければ身体を再生し蘇ることが出来る(侵食率は上昇する)。また、100%を越えても、先述のタイタスを使用すれば生き返ることが出来るため、DXは非常に「死ににくい」ゲームとなっている。

※バックトラック(戻り道)……クライマックスが終了しエンディングに入る時点で、PC達は上昇した侵食率をロイスの数×ダイス%だけマイナスする。この時、100%以下まで引き下げられなかったPCは「力に呑まれ」てしまい、日常に戻れなくなり暴走(DX本編では化け物と化してしまう)してしまう。ゲーム上ではロスト(キャラクターの消滅)扱いとなる。
  「死ににくい」からといって安易に能力を乱発したり、《リザレクト》やタイタスを濫用していると、最後の最後で侵食率が上昇しすぎたり、ロイスが足りなくなってしまうため、PCは常に「暴走のリスクを背負いながら力を行使する」こととなる。
 
 
そして時間は経過し――
 
理流:できたー。
GM:他の人もできたかな?
乾史&十三:完成〜。
 
 
◆犬神乾史の場合:
 
乾史:俺のシンドロームは獣の力を発揮する”キュマイラ”と超高速を発揮する”ハヌマーン”。スピードで敵を翻弄しつつ、拳をたたき込むぜ。あ、GM、エフェクトの《完全獣化》と《破壊の爪》なんだけど『小銭を握ったオーラナックル』って演出で良いかな?ルール的には武器が持てなければ問題ないはずだし。
GM:OK。ただし、使用中は明らかに異常な雰囲気が漂う、くらいのペナルティはあるからね。
乾史:オーケーオーケー。
GM:じゃあ次は理流。
 
 
◆有本理流の場合:
 
理流:シンドロームは器物を作り出す”モルフェウス”と超人的な計算能力を誇る”ノイマン”。《ダブルクリエイト》、《マルチウェポン》でいつでもどこでも二丁拳銃です。
十三:うむ、相変わらずのトリガーハッピーだ。
理流:それは褒めているのかな?(笑)反面、相変わらず防御系は一切捨ててます。
GM:DXには《リザレクト》があるから、火力特化で押し切るって戦術もそれはそれでありかと。では最後は十三。
 
 
◆鷂十三の場合:
 
十三:私は領域や結界を操る”オルクス”と、幻覚を操る”ソラリス”。能力値で【社会】をあげて、エフェクトも《絶対の恐怖》や《錯覚の香り》といった【交渉】技能系を中心に組んでみました。
理流:話術巧みな十三さんらしい組み合わせね〜。
十三:ミドルフェイズでは《錯覚の香り》や《領域調整》で交渉を有利に進めつつ、戦闘では《絶対の恐怖》と《錯覚の香り》を組み合わせて、敵を排除します。エフェクトのイメージは護符が相手を取り囲むという感じで。
 
  ×      ×      ×
 
GM:それでは最後にPC間ロイスを乾史→理流→十三の順で結んでください。
乾史:おう。理流に対しては憧憬/隔意で、隔意が表。フツーに育って学校行って、悩みなんかねーんだろうなー、と羨ましく思いつつ、しょせん俺とは違う世界の人間だしな、とか考えている。
理流:実際はそこまでフツーに育ってないんだけどね(苦笑)。十三さんに対して尊敬/不信感で、尊敬が表。仕事もするし一人で娘さんの面倒も見てすごいなー、と思いつつ、なかなかホントの事を言わない人だなーと思ってる。
十三:(苦笑)まあ、そこは交渉屋だからな。私は犬神君に対して感服/憐憫。憐憫が表だ。親の庇護もないストリートキッズという事実に哀れみを覚えつつも、この街で生き抜いているという事実には一目置いている。
GM:……これで下準備は終わったかな。それでは、プレイを始めようか!
一同:よろしくお願いしますっ!
 

●OPENING PHASE 
●Opening 01 夜闇の遭遇  Scene Player ――犬神乾史

 
  犬神乾史はいつものように追われていた。
  いつものバーでいつものように用心棒をつとめ、酔って店内で暴れたチンピラを、やはりいつものようにぶちのめした結果だった。
  あとは追っ手をあしらってねぐらに帰れば、それで乾史のいつもの一日が終わる。
  だが今日の夜は少しだけ、いつもとは違っていた。
 
GM:最初のシーンは乾史から。
乾史:うっす。侵食率は、っと(ころころ)。おっし、1か。幸先いいぜ。
GM:君は夜の盛り場で、用心棒の仕事をしていた。君の腕っ節はもう十分この街に知れ渡っており、子供が用心棒を務めていることを笑う者はいない。
乾史:んで、いつものように狼藉をはたらくチンピラを店の外に引っ張っていってぶちのめす、と(笑)。
GM:その通り。だが今日の君はちょっと派手に暴れすぎた。盛り場を巡回していた少年課の刑事さん達が君を見つけると……「そこの少年、何をしているー!」
乾史:ホットスタートだな。よっしゃ、早速《軽功》を発動。ビルの壁を飛び越えながら逃げ回るぞ。へっへーん、おまわりなんかに捕まるかよっ。
理流:「まてー!」「どっちに行ったっ!」「あっちかっ!」「御用だ御用だ!」「神妙にお縄につけい!」
乾史:刑事はそんなにわらわら出てこねー!ってかなんか別のが混じってる!(笑)
GM:だが所詮彼らはエキストラ。《軽功》を使ったのなら判定もなく逃げきれる。
乾史:「鬼さんこっちらー!」っと刑事達を小馬鹿にしながら路地裏を走り抜けるぜ。
GM:ネオンの流れる夜闇を、常人離れした速さで疾駆する君。そして表通りへと続く道に差し掛かったとき。――そこには両手をコートのポケットに無造作に突っ込んだ男が佇んでいた。表通りの明かりが逆光となっていてその顔は良く見えない。
乾史:邪魔だどけどけっ!《軽功》で頭上を飛び越える。
 
  頭上を飛び越した。そう思ったとき、男の口からよく通る低音が響いた。
  「――Aumオン
  その瞬間。
  それが真言マントラの一節と理解など出来るはずもなく――
  犬神乾史は見えない力で、地面に叩き落とされていた。
 
理流:べしゃあっ!ぷちっ(笑)。
乾史:俺はゴキブリかっ!?この力、覚えがある……まさか山岐かっ?
GM:コートの男が一歩近づくと、光の加減が変わり顔が露わになる。そこに居たのは紛れもなく山岐惣一……君が唯一苦手とする、「不思議な力を使う」刑事だった。
乾史:ちくしょー!またてめぇかよオッサン!
GM:もがく君を静かに見据える山岐。そしてすぐに、後ろから追いついてくる刑事達。
乾史:へっ、ここで会ったが百年目、今日こそはてめぇをぶちのめしてや――
GM:「――Aumオン
乾史:ぐぺぇっ!(爆笑)ふたたび潰れる。
理流:「いたぞー!」「容疑者確保!容疑者確保っ!」「召し捕ったりー!」
十三:だから変な刑事が紛れ込んでいるって(笑)。
乾史:お、覚えてやがれ……。
GM:山岐は黙して何も語らない。ただ連行される君を見つめるのみだった。
 
  刺々しいほどまぶしい白熱球のランプ、年季の入ったスチール机、そして向かいには刑事が二人。典型的なトリシラベシツというやつだろう。これでカツ丼があれば完璧なのだが、現実にはカツ丼など出ない事を、乾史は経験として知っていた。
 
GM:さて、時計を進めよう。新宿のとある警察署の取調室で、君は山岐とその部下に取り調べを受けている。
乾史:あぁん?カツ丼はねーのかよカツ丼!サービス悪いぞこのトリシラベシツ!
十三:サービスの良い取調室とは聞いたことがないな(笑)。
GM:腕を組んだまま、ひたすら沈黙する山岐。代わりに、横にいる彼の部下……そうだね、川岸という名前にしよう。彼が口を開く。「飲み屋で暴れた客をぶん殴る、と。正当防衛を主張するには、ちょっとやり過ぎかな」
乾史:ヘッ!ショーコはあんのかよ〜ショーコは!
GM:「いや〜、証拠も何も現行犯だしねえ……」(苦笑)
乾史:んだよぉ、夜道なのに顔が見えたってのかよ〜ぉ!?
GM:「と言っても、チンピラ三人を一方的に殴れる少年なんて……あっ、そうか、この街には君よりよっぽど強い少年がいるんだな!」
乾史:俺以外に出来るヤツがいるわけねーだろーッ!?(一同爆笑)
十三:自供してどうするっ!(苦笑)
GM:「……なあ犬神君。君ももう山岐さんに何度も補導されているんだし、そろそろ学校行くなり仕事に就くなり、真っ当な生き方を探した方が良いんじゃないかな」
乾史:うっせーうっせー!どんな生き方しようと俺の勝手だろっ!
GM:すると、腕を組んで聞き入っていた山岐がおもむろに口を開く。「いつまで刹那的な生き方を続ける?お前の歳なら高校に行っているのが普通だ」
乾史:フツウ?はっ、あいにく高校に行く金を出してくれるような親はいないんでね。
GM:「別に親は関係ない。お前が行きたいと思えば行ける。それだけだ。お前ぐらいの年頃に勉強して世界を広げておくことは、人生においてとても重要な事だ」
乾史:ふん、いつになく饒舌だな。けどな、その学校で爪弾きになったヤツはどこに行けばいい?フツウじゃいられないはみ出し者は、どこにだっているんだよ。学校にも、この街にもな。
GM:「――だが、いつまでもお前がこの街にいられるとは限らない。近く、新宿区と警察が合同で『きれいな新宿運動』というキャンペーンを実施する」
乾史:ハンドアウトにあったやつだな。結局何をするんだ?
GM:平たく行ってしまえば文字通り「社会のゴミ掃除」。治安悪化の原因となっている浮浪者やチンピラを狩り出して更生施設に送り込んだり、彼らのたまり場となっている廃ビルなどを取り壊したりとちょっと過激なキャンペーンだ。
乾史:(頬杖をつきながら)ケッ、お上の考えそうなことだぜ。
GM:君が悪態をついていると、唐突に取調室の扉が開かれ男が入ってくる。
乾史:お?
 
  その男の年は三十そこそこ。髪を丁寧にオールバックに撫でつけ、いかにも理知的な容貌をブランドものの銀縁メガネで彩っている。”絵に描いたような”キャリア官僚。高級スーツに身を包んだその姿は、ヤクザと間違えられそうな警官ばっかりのこの署内で、明らかに一人だけ浮いていた。
 
十三:お偉いさん、と見るべきかな。
GM:「辰巳署長、取調室にわざわざ御用ですか?」と川岸刑事。
乾史:署長〜?
GM:辰巳署長と呼ばれたその男は、やたらと芝居がかった仕草でメガネを中指で押し上げる。「山岐さん、何時まで手ぬるいことをやっているのです。傷害の現行犯、証拠も十分。早く検挙してしまえばいいでしょう」
乾史:(いきなり山岐になって)「……しかし、この子はまだ未成年だ」
GM:(鼻で笑って)「”未成年”……ね。犯罪者予備軍にとって実に都合のよい呼称ですな。そんな薄っぺらい言葉で甘やかすから(顎で乾史を指し)こいつらがつけあがる」
乾史:じゃあ、山岐は言い返さず沈黙する。
GM:「――私が展開するキャンペーンにはそんな甘さは必要ない。お前達は秩序を乱すゴミだ。新宿という庭を汚すゴミを片付ける。それが私の使命だ」
乾史:ちょい待てやオラ。甘やかされてるってそりゃ俺の事か。
GM:「それ以外に聞こえたとするなら、悪いのは頭だけでなく耳もということだな」
乾史:ざけんなよ。こちとら自分がガキだってことを盾にしたことは一度もねぇ。テメェのケツはテメェで拭ってきたんだよ!
GM:「それは殊勝な心がけだ。では自分の罪には責任を持ってもらうとしよう」……と、ここで内線が鳴る。「所長、来客ですが……」。
十三:(いきなり辰巳)「ふん、ゴミの分際で命拾いをしたか。だがキャンペーンが始まれば容赦はせん。貴様達が存在していい場所など、この新宿からなくなると思え」
GM:乗っ取られっぱなしだな(苦笑)。所長はそう言うと取調室から出て行く。
乾史:とっとと出てけ。二度と戻ってくんな。……言っとくがてめーのやってることは、見えないところに汚いものを押し込んでフタをするってだけだぜ。
GM:そんな君に「……帰れ」と山岐。そして川岸が続ける。「キャンペーンの事はよくわかっただろう。君が助けた人達からも事情を聞いているし、今夜はこれ以上拘留するつもりはないけど、しばらくは大人しくしていた方がいい」
乾史:フン。俺には関係ないね。あと、おっさん!次会ったときは今までの借りをきっちり返させてもらうからなっ!
GM:山岐は当然黙して何も語らない。川岸の方は苦笑している。
乾史:んじゃ、ぶーたれながら警察署を後にする。――とは言え、そのナントカキャンペーンってのは放っておくわけにもいかねぇか。ねぐらに足早に戻ることにするぜ。あと、辰巳署長にロイスをとる。執着/敵愾心。当然敵愾心が表だ。
GM:了解。言いしれぬ不安を胸に抱きながら、仲間達の元へと足早に夜の街を駆ける乾史であった。ってなところでシーンを切ろう。
 
 

●Opening 02 出会いの予感  Scene Player ――有本理流

 
  四月中旬。桜もそろそろ見納めとなり夏に向かって緩やかに加速を始める気候――とは正反対に季節外れの寒波が到来するは財布の中。一層の出費が予想される連休を控えてのこの状況は……まずい。非常にまずい。
  どうしたものかと思案していると電話が入った。CCCからの仕事の依頼だ。いつものような任務概要ではない、担当の麻生より直接の電話。「詳しい話は後ほど。まあ簡単に申し上げますと人材スカウトです」――とのことだ。
  少々勝手が違うが、仕事には変わりない。断る理由はなかった。
 
理流:GM、GM。私ドラマCD聞いて思ったの。
GM:……なんだねのっけから。
理流:私の暴走はまだまだ足りなかったんだなって。もっと頑張るのでよろしくっ!
GM&乾史&十三:(冷たく)いいよ頑張らなくて。
理流:大丈夫!ちゃんと二人と絡むように暴走するからっ。
乾史&十三:こっちくんな(笑)。
GM:さて今回の依頼だけど、君は麻生さんから直接電話で呼び出された。いつもならメールで任務概要が送られてくるのだが、今回は会って直接概要を伝えるとのことだ。
理流:ハンドアウトにもそう書いてあったっけ。ちょっと勝手が違うけど、GWに向けて臨時収入が欲しかったし、断る理由はないわね。
GM:CCC本社に到着した君は、衝立で仕切られた打ち合わせスペースに案内される。ちょっとした商談やミーティングを行う場所だね。
理流:メイド服の裾をひらひらさせながらいきまーす。
乾史:(いきなり社員)「あぁ……また来たよ。メイド服の悪魔」
十三:(同じく社員)「くそぅ、これで一時間は仕事が出来ないな。アレが来ると必ず騒ぎになるからな」
理流:何で疫病神扱いー!?(笑)
GM:そんな微笑ましい光景を横目に到着すると、麻生さんはすで待っている。「有本さん、お久しぶりです」……ちなみに、麻生さんが抱える人材は海千山千なので、今更理流ぐらいでは動じないから安心してくれ(笑)。
理流:お久しぶりです。お仕事を受けに来ました。今回オーダーシートが来ていませんでしたけど、どういった内容なのでしょうか?
GM:「いつもなら企業や個人から受けた依頼に対してCCCがしかるべき人材を選んで派遣するという流れなのですが……、今回はCCC、といいますか私個人からの依頼なのです」ひらたく言うと、麻生さんが個人的にやって欲しい仕事を、CCCの任務として理流に依頼する、と思ってくれい。
理流:了解、了解。
GM:「有本さん、貴方は――」って君どこに住んでいたっけ?
理流:高田馬場周辺のマンション。ちょうど線路を越えた先あたり。
GM:妙に詳細だな(苦笑)……「貴方は新宿には良く行かれますか?」
理流;はい、みー君とよく行っていますよ。
乾史:つーか、理流の場合、主な活動範囲は池袋じゃね?乙女ロードとか(笑)。
理流:う、否定できないかも(笑)。
GM:「それは良かった。ぶっちゃけ、新宿に土地勘がありそうで暇そうな人を探したら貴方がヒットしたんです」(爆笑)
十三:本当にぶっちゃけたー!
GM:「本当は東野さんに依頼したかったのですが、彼は北がらみの件で身動きが取れないのです。ま、半分は個人の遺恨がらみですから私の預かり知らない事ですが」
理流:あ、麻生さんクールだ(苦笑)。
GM:「さて、本題に入りましょう。有本さんは『新宿の狂犬』というものを聞いたことがありますか?」……<情報:裏通り>で判定を。
理流:そんな技能はないから平目で……(ころころ)4ね。
GM:新宿で用心棒をやっている少年がそう呼ばれている、とは聞いたことがある。非常に凶暴でヤクザにも恐れられているとか。
理流:少年?かわいい子かな?かな?
乾史:かわいくないかわいくない、だから俺に絡まないでくれ頼むから(笑)。
理流:(ぼそっ)意地でも絡んでやる。
乾史:やめろー!
GM:「貴方もご存じでしたか。新宿の裏街には、様々な事情で帰る家のない子供達がいるのですが、彼はそんな子供達の一部をチームとして取り纏めているのです」
理流:子供はちゃんとおうちから学校行かないとダメなんだぞっ!……なるほど、今回はその新宿のワンちゃんを学校に行かせればいいんですねっ!
GM:「いえ、別に彼が学校に行こうが行くまいが私には興味がありません」(爆笑)
十三:本当にドライだな。
GM:回りくどいことは言わない人なので。あと肝心なことと言わない方が面白いことは絶対言わない(笑)。
乾史:たち悪いな〜(笑)。
GM:新宿に流れ着いた子供達は、大抵ヤクザにいいように使われて、薬の売人にされたり風俗に売られたりして、悲惨なことになってしまう。しかしこのチームに関しては、リーダーである『新宿の狂犬』が各方面から伸びてくる手を全てはね除けているのだ。
十三:狂犬とあだ名されている割にはやけに任侠的だな。
乾史:俺が頭を張っているうちはゼッテェ薬とか風俗とかに手を出させないぜっ!
GM:「もちろん、ただの少年がヤクザと互角に張り合えるわけがありません。私も少々接触したことがあるのですが、彼も私たちと同類と考えて間違いありません」……まあ詳しくは小説を参照してくれ(笑)。
十三:よもやこのリプレイで広告が聞けるとは(笑)。
GM:「しかし、彼は現在どこの派遣会社にも所属していません。そこで是非我が社にスカウトしようと!」(拳をぎゅっと握りしめて)
理流:麻生さんって本当に人材集めが好きなのねえ。いっそのこと集めた人材で独立しちゃえばいいのに。
GM:麻生さん的には独立するより、組織の力をうまく利用してやりたい事をやる方が性に合っているそうだ。
十三:『信長の野望』で家臣にした武将一覧を眺めてにやにやするタイプだな(笑)。
乾史:もしくはトレーディングカードゲームでレアカード集めて悦に入るタイプ(笑)。
GM:「あんな紙っぺらではダメです!やはり血の通った生のモノでないとっ!」
乾史:いない人間のつっこみに答えるなよっ!つーか生ってなんだ生って!(笑)
理流:そ、それはそれとして、何でそんなに急いでいるんですか?
GM:「――こほん、実は気になることがありまして。今般、新宿区と警察が合同で『きれいな新宿運動』という暴力追放キャンペーンを実施する予定なのです」
乾史:そこらへんは俺のオープニングで出ていたな。
GM:具体的には、裏通りなどにたむろしているヤクザや不法滞在外国人、浮浪者、そしてストリートキッズ等をまとめて駆除してしまおう、というものだ。
理流:追い出すだけ?
GM:実際にはドデカいトラックがやってきて、捕まえた人達を詰め込んでは更正施設に送り込む、ってイメージだ。となれば、ストリートキッズのリーダーである『新宿の狂犬』も十中八九捕まってしまうと麻生さんは恐れている。
十三:国に捕まって洗脳されるわけだ(笑)。
乾史:ボク乾史ヨロシクネ、ボク乾史ヨロシクネ(笑)。
GM:洗脳はともかく、能力者であることが国に知られれば色々と厄介なことにもなる。「私としましては、彼が他の組織に渡る前に、カードの一枚として――もとい、貴重な人材として我が社の迎え入れたいと考えているのです」
理流:何か本音がだだ漏れに(苦笑)。で、その彼は具体的にどこにいるのでしょう?
GM:「彼のグループは、『若葉通り商店街』の廃ビルを根城としています」
十三:商店街に廃ビル?
GM:若葉通りとは、新宿の裏通りにある、路地裏よりは少し広い程度の狭い道だ。かつて……昭和初期から中期頃にはスナックや居酒屋、ちょっといかがわしいお店が建ち並んでにぎわった商店街だったんだけど、今ではさびれて、ほとんどの建物が廃ビル同然となってしまっている。
乾史:今となっては名ばかりの商店街、ってことか。
理流:わかりました。つまりその商店街に行ってそのワンちゃんに首輪をつけてここまで引きずってくればいいって事ですね!(笑)
乾史:こいつ何にも聞いていないよ!?
GM:「まあ、なるべくなら相手も了承の上で連れてきていただきたいところですが、手段はお任せします」
乾史:お任せなのかよッ!?
理流:(素に戻って)にしても、私にスカウトを頼むって成功させる気あるのかしら?
十三:自分で言うな(苦笑)。いや確かにその通りだが。
GM:率直なところ、麻生さんは様々な人材に、しょっちゅうスカウトをかけているのです。めぼしい人材が見つかると、とりあえず勧誘。
乾史:今回の場合、『きれいな新宿運動』が始まるとほぼ間違いなく俺は連行されるだろうしな。それまでの間で動かせる人材が理流しかいなかったって事だろ。
GM:ご名答。やや特異な境遇の乾史に対して、人材コレクターの血が騒いだって程度のお話しです。登用できたらめっけもん、ぐらいと思っている。
理流:そう言えば今回のお給料は?成功しないと無報酬ってことだと、ホントに首に紐をつけてでも連れてくる事になるけど。
GM:日当が出る。そして成功すればプラスボーナス。基本的には土日に現場に足を運んで交渉して貰えればいい。派遣の世界としては若干変則的な依頼だけど、今回は外伝なのでこういう風にしてみました。いつもの財産判定とかも気にしないでいい。
理流:わかりました。ここからなら若葉通り商店街は歩いていける距離だし。早速行ってきますね、麻生さん。
GM:「よろしくお願いしますね」んじゃ、ここでシーンを切ろう。
 
 

●Opening 03 宮仕えの哀愁  Scene Player ――鷂十三

 
  一ヶ月前に上司から「簡単な案件だからよろしく」と渡された、ひとそろいの見積書と住所が書かれたメモ。それが災厄の始まりだった。
  どこをどう間違ったのか、様々な努力は全く実を結ぶことなく四回目の交渉とあいなった。おそらく今回も実を結ぶことはないだろう。深いため息と共に、鷂十三は大里トヨの自宅へと足を向けた。
 
GM:お待たせ十三。君のシーンは、見積書を持って交渉相手である大里トヨさんの家の前に到着したところから始まる。
十三:どのような家かな?
GM:平たく言えばボロ屋。周りには最先端の高層ビルが建ち並んでいるだけど、この一角だけは昭和のまま時間が止まってしまったかのようだ。
理流:木造の家屋に木の塀、狭い庭には盆栽の棚……とか?
乾史:木戸には牛乳瓶入れがあったりするわけだ。
十三:では呼び鈴を押して入るとするか。
GM:「ビー、ビー」
乾史:ブザーかよっ!(笑)
GM:「鍵はかかってないよ。はいっといでー」
十三:では失礼いたします。トヨさんがいる居間まで上がらせて貰おう。
GM:居間でこたつに入りながら君を待っていたのは、大里トヨさん。君の資料に拠れば御歳九十にもなろうかというおばあさんだ。だがその背骨はしゃきっと伸び、炯々と輝く目、そして俗世にまみれた凄まじいオーラが体全体から立ち上っている。
十三:あと三十年はご健在そうだな。
GM:「かかか、お世辞を言っても何も出ないよ」(笑)
十三:どうも大里様。今日もお茶を頂きに上がりましたよ。
GM:「茶なんかでないよ、こりゃあたしの分だよ」
十三:そうですか、そうですか、では私の分は私で用意しましょう(笑)。
GM:ちなみにトヨさんちの玄関の横には、彼女所有の自販機があるのでそこで買われるのが良いでしょう(笑)。
乾史:完全に強欲ババァって感じだなぁ。
GM:「んで、こっちの望み通りのものを持ってきたんだろうね。とっとと見積出しな」
十三:こちらにございます。どうぞご確認ください。……といっても前回とほとんど金額に変化はないんだよね?
GM:その通り。トヨさんは目を通すと「ああん?前回とぜんぜん変わってないじゃないか。ダメダメ。やり直し」と見積を十三に向かって放り投げる。
十三:厳しいな。GM、彼女が売ろうとしている物件をもう一度確認したい。
GM:ハンドアウトにも有るとおり、トヨさんは新宿の一等地に何か所か土地を持っている。んで、そのトヨさんから十三さんの勤める銀行に「私も老い先短いからねぇ。土地を売って精算したいと思ってるんだよね」というな話が持ちかけられたのがおよそ一ヶ月前。もっとも、本来は君ではなく君の上司が預かった案件なんだけどね。
十三:では、トヨさんに邪険にされながらも搦め手的な話を延々繰り返そう。見積もりのことはさておき、大里様は土地を精算されたお金をどのようにされるお積もりでしょうか。当行では金融商品も各種取りそろえておりますので、そちらで色をつけると言うことも……。
GM:「利率が10%以下の債権なんぞ興味がないわ、寝言いってんじゃないよ!」
乾史:どんだけハイリスクな商品なんだよ!?
GM:えー、実のところ、トヨさんが所有している土地や建物は利回りの良い優良物件なので、銀行が勧める一般人向けの金融商品なんぞ全く興味がないんですよ。
十三:ふむ。そんな優良物件を売り払う理由が尚更わからないな。引き続き茶飲み話がてらの搦め手で、少し探りを入れてみるけど。
GM:「あんたにゃ関係ないね、そんなことより見積もりの額はどうなってんの」(ばんばん、とちゃぶ台をたたく)
十三:……どう話を振っても結局はそこに落ち着く、ということか……。では話題を変えて。大里様もここにお住まいになって長いのでしょう。最近のこの街の様子はいかがです?特に最近では自治体の再開発計画なども進められていると伺っておりますが。
GM:「はんっ、いつの時代もこの街は変わらないね。欲にまみれた亡者ばっかりだ」
十三:(ぼそっ)お前が言うな(一同爆笑)。
GM:「ああん、何か言ったかい?」
十三:いえいえいえ、大里様ほどになれば世俗の流れなど……。
GM:「おべっかは良いから見積よこしなよ見積!」(ばんばん)
乾史:マジで取り付くシマがねぇー。
十三:我々としましては前回の見積が最良であると考えている次第なのですが……再確認だけど、うちの銀行としてはまっとうな見積もりを出しているんだよね?。
GM:うむ。銀行としても、君個人の感覚としてもしごくまっとうな見積額だ。ちなみに君の上司からは「これ以上の増額、マジあり得ないから」って言われているのでよろしく(笑)。
十三:マジあり得ないからってアンタ……。
GM:「まあ、君のポケットマネーから出すというのであればかまわないがねっ!」とも言われているな(笑)。
十三:それこそマジあり得ん(苦笑)。うーむ。トヨさんの意見も聞くだけ聞いてみるか。大里様、我々の見積もりのどこがお気に召さないのでしょう?
 
  「ここだよ。この物件」
  大里トヨは見積もりとセットになっていた地図を指さす。
  「このビル、今の五倍積んできな」
  ――その建物は、新宿の一角『若葉通り商店街』に面していた。
 
十三:五倍!?それは吹っかけているなんてレベルじゃないぞ。 
理流:……あれ、もしかしてここ、乾史くん達がたまり場にしているビル?
乾史:おいおい、このばあさんの持ち物だったのかよっ。
十三:大里様、当行の見積より五倍の値がつくというその根拠、申し訳ございませんがお教えいただけないでしょうか?
GM:「それを調べるのがあんたの仕事だろうが!」(ばんばん)
十三:――おや?GM、トヨさんは確かにそう言った?
GM:ああ。確かにそう言った。「まずは自分の目で見てからモノ言いな銀行員。アタマの前にまず足を使ってからだ」
十三:なるほど。これは一本とられましたな。はっはっは〜(目は笑っていない)。
乾史:こええよ、じゅうぞう(笑)。
十三:……GM。私はまだその物件を見たことがないのかな?
GM:はい。まだ見ていません。というのも、十三にとってこの仕事は本来自分の管轄ではありません。上司から「見積もりを届けるだけだからよろしく」と言われて引き受けてしまったのが運の尽き。休日に届けた見積もりはなぜか突っ返され続け、現地で物件を確認するなどはまだ全然手つかずです。
十三:ああ、娘と過ごす貴重な土日が……。
GM:「見積がこれじゃあ用はないね。さあ、帰った、帰った。アタシもこれから用事があるからね」
十三:しょうがない、今日のところは出直すか。ではでは、またお茶を頂きにあがりますね。勿論私の分は持参しますので。
GM:「こういうときはあたしの分を含めてお茶を持ってくるもんだろ」(笑)
十三:いえいえ、私ごときに大里様の舌にかなうお茶はご用意できません(笑)。
GM:「あと、あんたが上がったんだから玄関も掃除しときなさいよ」(笑)
十三:いえいえ、私ごときが掃除するまでもなく、大里様の日頃のお手入れが隅々まで行き届いてピッカピカでございますよ、では私はこれで〜(とそそくさと退場する)。
乾史:褒めてんだかイヤミ言ってんだかはっきりしろよ(笑)。
 
  大里トヨの家を後にはしてみたが、結局のところ事態は何も進展していない。このままでは愛する娘と過ごす時間は無くなる一方だ。
 
理流:それにしてもこの交渉、絶対うまくいかないよね?
十三:ああ。まず真っ当な提示額の五倍を吹っかけてきているあたり、まともな交渉をする気があるとは思えない。だが……。
乾史:だが?
十三:そこでひっかかるのが、もともとこの話を持ちかけてきたのがトヨさんの方、という事だ。売りたくないから吹っかける、ならともかく、自分から売りたいと言いつつ額を吹っかけるというのはどうにも解せない。
理流:ただの業突おばあさんか、よっぽど何か理由があるのか……。
乾史:近々この辺りで大がかりな地上げが予定されているとか?
十三:どうだろうかね。
GM:そんな風に十三が考えを巡らしていると、銀行から電話がかかっている。「鷂君、首尾はどうなっているんだい」
十三:事態に進展は無しです……。というか、大里様に売る気がないとしか思えません。
GM:「いやいやいや、そんなことはあるはずがないよ。だって大里さんの方から売りたいと持ちかけてきたんだから。それがどうしてこんなにこじれるかなぁ」
十三:私もそこが知りたい(苦笑)。売りたがっていた理由はなんでしたかな?
GM:「老い先短いから、不動産を処分して身辺整理をしたい、ってことらしい」
乾史:たくさんの資産のうち、一部を処分するって感じ?
GM:いいや。持っている土地のほぼ全部だ。特にトヨさんの場合は不動産で身を立てているので、これは全財産を処分すると同じ意味だと思ってくれ。
理流:土地でお金持ちになった人が、土地を売りたいと言ってきている……。
十三:ふむ……。一体どういう事なのだろうか。
GM:「困ったなぁ。こんな状況じゃあ買取先にもどう説明したらいいものか」
十三:……ちょっと待ってください!?もう買取先が決まっているのですか?
GM:「そうなんだよ。敬天興業っていうところなんだけど。だから困っているんだよね。まったく、何で君はこんな簡単な交渉もとりまとめられないんだ!」
乾史:おいおい、八つ当たりを始めたぞ。
理流:あれぇ、以前(本編第四話参照)出てきた十三さんの上司……えーっと、三村さんって、かなりまともな人じゃなかったっけ?
GM:あっと失礼。言うのを忘れていましたが、この時点で君の上司は三村さんではありません!
十三:何ィ!?……と言うことは、まさか前田の方か?
GM:ぴんぽーん。「私に任せてください」と「彼のせいです」が口癖の前田さんだ。
一同:駄目駄目だぁ〜〜!!(一同爆笑)
理流:ま、待って。確か前田さんって左遷されなかったっけ?
十三:(暗い声)……それは本編の話だから、この時点ではまだ健在のはずだ……。
GM:うむ。今はまだ、点数を稼ごうと上司から無理な仕事を請け負っては、部下に押しつけるという仕事生活を送っている。
乾史:ほんっとーにダメな奴だなあ(苦笑)。
GM:「まったく、君なら出来ると見込んで頼んだのに。このままじゃあ、ボクの株が下がってしまうよ。もしこのまま調整をつけられないようなら次回のボーナスは覚悟しておきたまえ!」と言い残して電話が切られる。
十三:……モチベーションが果てしなく削られたが、さりとてこれ以上娘との時間を潰されるわけにもいかん。とっとと解決すべく、物件の確認に向かおう。
GM:了解。んじゃ、ここでいったんシーンを切ろう。
 

 

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